「学力の経済学」を読む

 俺自身は二児の父親である.何かのきっかけで表題の書籍を読んだ.日本では教育に関して統計を駆使したデータが少ない.教育評論家,育児の専門家などの「専門家の意見」ばかりが取り上げられ,エビデンスに基づいたデータというものが存在しないに等しい状況である.

 育児中の母親は必死になって育児書を読みあさり,東大に息子全員を入学させた母親の話に耳を傾けている.子供により良い人生を送ってほしいとの願いからくる行動であることは疑いない.数万人の子供を診た小児科医の話も傾聴に値するだろう.しかし,それも所詮一人の人間という限界に突き当たる.

“「学力の経済学」を読む” の続きを読む

筋肉,運動および肥満:分泌臓器としての筋肉

 NHK スペシャル「人体」シリーズ第 2 集「驚きのパワー!“脂肪と筋肉”が命を守る」で紹介されていた論文である.筋肉もまた様々なメッセージ物質を出して体内の臓器と対話している分泌臓器である,という視座を提供した点でこの論文の功績は大きい.2018 年 7 月時点での被引用回数は 1000 を超える.

 筋トレはもはやボディビルダーやトレーニーの専売特許ではない.単に肉体を改造するだけでなく,代謝疾患や癌など人間を苦しめる病気を予防する優れた手段であることが,最新の科学研究によって分かってきた.運動が人の生命予後を改善することは疫学的には分かっていたのだが,その分子生物学的な機序がようやく明らかになってきた.今回はこの論文の全訳を紹介する.

 この論文の著者はコペンハーゲン大学の Bente Klarlund Pedersen 博士だが,論文引用の順番がきちんと文章通りになっていて非常に読みやすい.普通の論文だと引用の順番がぐちゃぐちゃで大変読みにくいのだが,きちんとした人なんだろうなと思わされる.いや,どうでもいいんだけどね.

https://www.nhk.or.jp/kenko/special/jintai/sp_4.html

“筋肉,運動および肥満:分泌臓器としての筋肉” の続きを読む

ヒトにおいて筋トレの頻度,強度,ボリュームおよび様式は筋断面積にどう影響するか

 今回の記事は庵野拓将さんのブログ記事,エビデンスにもとづく筋肥大を最大化するための筋トレ・ガイドラインで引用された総説を抄訳したものである.

 この論文は総説であってメタアナリシスやシステマティックレビューではない点に注意が必要である.選択基準に従って何件の論文がスクリーニングされたか,除外基準に従って何件の論文が除外されたかの記述がない.この記事は抄訳であり,一部省略があることを記しておく.

The Influence of Frequency, Intensity, Volume and Mode of Strength Training on Whole Muscle Cross-Sectional Area in Humans Sports Med. 2007;37(3):225-64

“ヒトにおいて筋トレの頻度,強度,ボリュームおよび様式は筋断面積にどう影響するか” の続きを読む