寒い住宅と燃料貧困の健康への影響 Marmot Review Team

 寒冷な住宅の健康への影響は冬季超過死亡率の上昇など直接的な影響にとどまらない.本稿ではMarmot Review Teamが2011年に刊行した表題の報告書を全訳して報告する.最後の参考文献は可能な限りリンクを示したが,リンクミスなどがあればご指摘願いたい.

 冬季間に高齢者が多く死亡するのは当然と考えられてきた.しかしそれが貧弱な断熱性の住宅のためであり,政策によって適切な改修と燃料への補助を施せば冬季超過死亡を避けることができ,それによって医療費が削減できるとすれば,国全体としては投資した予算よりも多くの果実を得ることができる.英国からの報告は野心的である.

概要

 本報告書は,燃料貧困や寒冷な住宅に住む人々が被る直接的・間接的な健康への影響に関する既存のエビデンスを検討したものである.それは,環境と健康の課題を一致させ,燃料貧困の削減と既存住宅の熱効率改善による健康への恩恵に関する証拠を検証している.寒い住宅と燃料貧困が健康に及ぼす直接的な影響に関する主な知見は以下の通りである:

  • エネルギー効率の良い住宅を持つ国は,冬季超過死亡が低い.
  • 冬季超過死亡と住宅の熱効率の低さ,室内温度の低さには関係がある.
  • 最も寒い4分の1の住宅では,最も暖かい4分の1の住宅の約3倍も冬季超過死亡が多い(冬季超過死亡全体の21.5%は,他の住宅よりも寒いという理由で,最も寒い住宅に起因している).
  • 冬季超過死亡の約40%は心血管系疾患に起因するものである.
  • 冬季超過死亡の約33%は呼吸器系疾患によるものである.
  • 低温と心・血管系疾患,呼吸器系疾患には強い関係がある.
  • 寒冷な住宅に住む子どもは,暖かい家に住む子どもに比べて,さまざまな呼吸器系の問題に悩まされる可能性が2倍以上も高い.
  • メンタルヘルスはどの年齢層においても,燃料貧困や寒冷な住宅によって悪影響を受ける.
  • 寒い住宅に住む青年の4人に1人以上が複数の精神衛生上の問題を抱えるリスクがあるのに対し,常に暖かい住宅に住んでいる青年のリスクは,20人に1人である.
  • 寒い住宅は,風邪やインフルエンザなどの軽症者を増やし,関節炎やリウマチなどの既往症を悪化させる.

 寒冷な住宅や燃料貧困による間接的な健康への影響や,住宅の改善から得られるその他の社会的便益に関する主な知見は以下のとおりである:

  • 寒い住宅は,子どもの学業成績,情緒的幸福感,回復力に悪影響を及ぼす.
  • 燃料貧困は,食事の機会や選択肢に悪影響を及ぼす.
  • 寒い住宅は手先の器用さに悪影響を与え,家庭内での事故や怪我のリスクを高める.
  • 住宅のエネルギー効率に投資することは,労働市場や経済の活性化につながり,建設労働者のスキルアップの機会も創出することができる.

 多くの異なる人口集団が燃料貧困と寒冷な住宅の影響を受けており,異なる集団に関連する様々なレベルの健康への影響もある:

小児

 乳児の体重増加,入院率,発育状況,喘息症状の重症度や頻度など,寒冷な住宅の悪影響が顕著に現れている.

青年

 寒い住宅や燃料の貧困は,青少年のメンタルヘルスに明らかに悪影響を及ぼす.

成人

 特に弱い立場の成人や健康状態に問題がある成人にとって,寒冷な住宅は身体的健康,幸福,自己評価による一般的健康状態に測定可能な影響を及ぼすことがある.

高齢者

 寒冷な住宅の影響は,死亡リスクの上昇,身体的健康,精神的健康という点で明らかになった.

 既存ストックのエネルギー効率を向上させることは,環境,健康,社会的な利益など,複数の利益を確保するための長期的かつ持続可能な方法である.

 2009年の最高医学責任者の報告書や最近の公衆衛生白書など,政府の政策文書や報告書は,寒い住宅や燃料貧困が人々の健康や幸福に与える具体的な影響を認めている.

2008年から09年にかけて35,000人だった冬季超過死亡の多くは,より暖かい住宅によって防ぐことができる…[公衆衛生白書, 2010]

 燃料貧困の削減と既存ストックのエネルギー効率の改善を目的とした介入に対する政府の政策,行動,財政支援は,公衆衛生と気候変動の両課題に対する政府の公約と一致する必要がある.

 住宅の熱効率の悪さという問題に対処するための政府の現在の支援と財政的コミットメントは,国民の健康と福祉を改善し,気候変動の緩和に役立つ可能性があるにもかかわらず,依然として不十分なままである.

 Warm Front Programmeのように住宅のエネルギー効率を高め,居住者の健康を改善することに成功したプログラムや政策を支援し,国家指標187 – Tackling Fuel Povertyのように,燃料貧困に取り組む地方自治体の行動を奨励する新たな取り組みが必要である.

導入

 寒冷な環境での生活は,健康へのリスクとなる.本報告書の目的は,燃料貧困や寒い住宅に住む人々が被る直接的・間接的な健康への影響について,既存の証拠を検証することである.そのような世帯の多くは,熱効率が低く,暖房が困難または高価な住宅に住むことになり,住宅ストックからの二酸化炭素排出量のかなりの部分を占めることになり (1),気候変動に悪影響を及ぼす.

 2008年,英国では18%の世帯が燃料貧困に陥っていると推定されている(2).燃料貧困世帯は,収入の10%以上を暖房費に費やし,健康や幸福の他の側面に悪影響を及ぼすか,あるいは節約のためにエネルギー消費を抑え,寒冷な住宅に住むかのどちらかを選ばなければならない.貧困層や社会的弱者,特に公営住宅を利用できない世帯は,エネルギー効率の悪い住宅に住んでいる可能性が高く,住宅の寒さや収入減による悪影響に対処するためのリソースや回復力を持ち合わせていない可能性がある.

 世界保健機関 (WHO) は,室内温度を居間で21度,寝室で18度に1日9時間以上維持することを推奨している.

 燃料貧困とは,十分な暖かさを得るために,世帯の純収入の10%以上を費やさなければならないことと定義されている(3).この定義は,長年にわたり,燃料貧困に責任を持つ様々な政府省庁に受け入れられてきた1.しかし,何をもって世帯収入とするかについては意見が分かれている.政府の定義では,住宅手当,市税手当,所得補助,住宅ローン支払い保護保険などが含まれるが,多くの推計では住宅補助を除いた計算式で算出されている.

 燃料貧困に陥るには,3つの要因がある:

  • 暖房費がどれくらいかかるかを決める,家のエネルギー効率.
  • 暖房用燃料のコスト.
  • 1割の暖房費がいくらになるかを決める世帯年収.

 住宅ストックのエネルギー効率を向上させることは,燃料貧困世帯を減らし,気候変動を緩和し,関連する健康上の利点をもたらすために不可欠なステップである.貧困はより広く健康に影響を与えるが,燃料貧困は明確に考慮されるべきであるからである.その理由は:

  • 所得貧困層がすべて燃料貧困層であるわけではない
  • 燃料貧困を減らすためには,所得の貧困以外の要因にも取り組むことができる.
  • その原因は相互に関連しているが,燃料貧困の影響は所得貧困の影響とは別である.これらは,健康全体というよりも,特定の健康状態に関連しており,健康上の負の結果は,所得の貧困によって引き起こされる結果よりも直接的である.
  • 燃料貧困は,所得の貧困よりも変化に適応しやすい.

 この報告書では,健康と環境に関する課題を整理し,燃料貧困の削減と既存住宅の熱効率の向上が健康にもたらす効果に関する証拠を検証している.

 寒い住宅に起因する冬季超過死亡(EWDs)と健康状態について,既存の証拠に基づいて説明し,評価する.エネルギー効率の向上による一次的および二次的な効果について検討する.さらに,この報告書では,さまざまな健康状態の影響を受けている燃料貧困世帯の割合に関する証拠を検討し,寒い住宅に起因する高齢者死亡率の割合を推定している.また,住宅ストックのエネルギー効率を高めることで得られるエネルギー評価と予測される健康増進の関係も分析している.

政策的背景

 国民の大半を燃料貧困から脱却させるには次の3つの方法が考えられる:一番目は所得を増やすこと(Winter Fuel Paymentなど),二番目は燃料価格の規制,三番目は住宅のエネルギー効率の向上である.財政支援のみによる燃料貧困の削減は経済状況,エネルギー価格,政治的意志に依存している.さらに,快適な暖房を得るために多くのエネルギーを使うことになり,二酸化炭素の排出量が増えるため,二酸化炭素排出量対策にならない.一方,住宅のエネルギー効率を高めることは長期的かつ持続可能な解決策であり,人々はより少ないエネルギーで十分に暖房を行うことができ,二酸化炭素排出量にも良い影響を与えることができる.

 2010年5月19日の建築物のエネルギー性能に関するEU政策指令2010/31/EU(EPBD)は,加盟国に対し,新しい建築物のエネルギー性能に関する要求事項を定めることを求めている(4).大規模な改修を行う場合,建物または改修部分のエネルギー性能は,現行の最低要求事項を満たすように改善する必要がある.建物外皮の一部を構成し,外皮のエネルギー性能に大きな影響を与える建築要素(例えば,窓枠)は,交換または改修される際に,最低エネルギー性能要件を満たす必要がある.また,この指令は,加盟国に対し,建物のエネルギー性能を計算するための共通の手法を開発することを求めており,2013年7月までに実施しなければならず,エネルギー性能証明(EPCs)に用いられている現在の手法に影響を与えることになる.

 2007年にCode for Sustainable Homes(5)が導入されて以来,英国の新築建物のエネルギー基準は,他の北欧の基準に近いレベルに近づいている.この規範が課す厳しい目標により,この基準に従って建てられた物件に住む人が燃料貧困に陥る可能性は極めて低くなっている.住宅ストックの熱効率に最も大きな変化をもたらした.しかし,2007年以前に建てられた住宅に比べ,導入後に建てられた住宅の割合はごくわずかであり,人口のほとんどがこの住宅に居住している.

 2000年,英国政府はDecent Homes Standardを定めた.これは,住宅の品質を評価するための指標で,住宅に関する法定最低基準や,効率的な暖房と断熱の両方を含む熱的快適性などが含まれる.2010年までにすべての公営住宅が良質の基準を満たすことを目的とした規制が導入され,弱者世帯が居住する民間住宅の70%以上が基準を満たすことが目標に拡大された2.これらの目標は達成されていない:2010年末の時点で,登録済みの社会的地主(RSL)の物件の3.8%と,公営住宅の12%-14%が不適切であると推定されており(6),新たな政策努力が必要である.そのような目標を達成するためには,より良い手段とインセンティブが必要である.

 民間の賃貸部門の不動産の基準とエネルギー効率を改善することは,特に困難であることが証明されている.民間の家主は,熱効率基準ではなく,健康と安全の規制に沿って住宅を改良することしか求められていないからである.

ケーススタディ住宅安全衛生評価システム(HHSRS)

 HHSRSは2006年4月6日に施行され,フィットネススタンダードに代わり,Decent Homes Standardの法定要素として採用された.ただし,HHSRSはリスク評価手順であり,基準を設定するものではない.室内汚染,衛生,構造的な安全性など,一連の危険に対して家庭内のリスクを測定するものである:

  • 過度な低温.室内の温度が常に低いことに起因する危険性.
  • 湿気とカビの発生など:ダニ,カビ,真菌の胞子によるリスクも含む.

 一定の等級を達成できない原因の多くは,住宅の熱効率が不十分であることに関連していることが確認されている.

さらなる情報には次を参照のこと:

http://www.communities.gov.uk/publications/housing/hhsrsoperatingguidance

 安全衛生に関する規制に違反している場合でも,民間の入居者は,英国の法律では保護されない立ち退きを恐れて,問題に対処する権利を行使しない場合がある.最近,家主が修理や安全衛生に関する法的権利の行使に踏み切った場合,法律を利用して借主を不適切に立ち退かせることがしばしば報告されている(7).今回のEPBDは,従来の指令(2002/91/EC)に基づき,通常はエネルギー支出の料金を支払わない不動産所有者が最低基準を遵守するために必要な措置を取ることを保証する目的で,特に賃貸建物について言及している(8).

「西サセックス州の市民相談局は,財産が深刻な荒廃状態にある2人の幼い子供を持つ夫婦を報告した.必要不可欠な修繕を大家が拒否したため,顧客は環境衛生局に苦情を申し立て,環境衛生局は修繕スケジュールを発行した.その後,家主は顧客にセクション21の通知を出した.顧客に代わって事務局がホームレス担当部署に問い合わせたところ,ホームレス担当者は,”環境衛生に関わる入居者を立ち退かせようとするのは,家主の常套手段である”と言ったそうである.」(Crewe2007)

 燃料貧困戦略は,2000年に制定された「暖かい住宅と省エネルギー法」によって政府に課せられた,2016年までに燃料貧困をなくすという法的義務を受けて,2001年に政府が打ち出したものである.この戦略には,燃料消費を減らし,燃料貧困に対する脆弱性のレベルを低減するために,住宅のエネルギー効率を改善することが含まれていた.当初はエネルギー価格が安定していた時期に燃料貧困世帯の減少が進んだが,2004年以降は燃料価格の上昇によりこの傾向は逆転している.

 既存ストックのエネルギー効率改善に対する前政権の支援は,主にWarm Front Schemeを通じて行われ,対象となる世帯に住宅の断熱または暖房設備の改善のための補助金を提供し,最近では処理困難な物件に対するシステムを試験的に導入している.Warm Frontプログラムへの応募は最近一時停止していたが,このたび応募資格を厳しくして再開された.しかし,「包括的歳出見直し」では,このプログラムは2013年から2014年にかけて段階的に廃止されることが示唆されており,エネルギー効率向上のための中央政府からの資金援助は完全に打ち切られることになる.一方,住宅のエネルギー効率や燃料貧困に取り組むための他のプログラムも進行中で,エネルギー供給業者に義務を課している.これらは,炭素排出削減目標(CERT)であり,サプライヤーがエネルギー効率対策を講じる義務を負っているが,このプログラムの一部(40%)のみが優先グループを対象としている3.ガスと電気の供給業者は,特定の低所得地域の消費者に省エネ対策を提供する必要がある.

 二酸化炭素排出量削減に地域社会を巻き込むことを目的としたパイロット・スキームは,政府省庁や民間パートナーによって主導されている.これらは,コミュニティが二酸化炭素排出量を削減するための情報と資金を提供し,多くの資金が住宅のエネルギー効率向上に投資された.このようなプロジェクトには,DECCのLow Carbon Communities Challenge,NESTAのBig Green Challenge,British GasのGreen Streetsなどがある.また,保健省は,PCTと地方自治体のパートナーシップを発展させ,寒い住宅や燃料貧困に苦しむ人々を特定し,ターゲットとすることを目的としたパイロットプロジェクトに資金を提供した.このプロジェクトについては,以下のケーススタディボックスで説明している.

 CESPは多くの低所得世帯に恩恵をもたらすと考えられるが,現在のところ,低所得者を対象として燃料貧困を削減することを目的とした公開プログラムは存在しない.このプログラムは,最も支援を必要としている人々よりも,低所得地域に住むより高所得で質の高い住宅に住む世帯の方が,より多くの恩恵を受けるというリスクがある.さらに,多くの低所得世帯は,指定された貧困地域の外に住んでいる.低所得世帯ではなく,低所得地域を対象としたプログラムでは,彼らは見逃されることになる.

 このレポートが発行された時点では,エネルギー法案が国会を通過している.これは,2012年まで実施されているCERTとCESPプログラムをEnergy Company Obligation (ECO)に統合するための規定を求めるものである.グリーン・ディールとは,民間セクターが資金を調達し,エネルギー料金の請求によって返済する,家庭用および非家庭用不動産のエネルギー効率の改善を可能にする枠組みを定めたものである.この法案は,国務長官が2015年までに民間賃貸部門のエネルギー効率に関する規制を導入する権限を定めている.これらは,住宅の家主が入居者からのエネルギー効率の改善に関する合理的な要求を拒否することを防ぎ,エネルギー効率の最も低い物件の改善を義務付けることができる.しかし,権限の行使は審査の結果やその他の厳しい条件によって左右される.

 また,政府は,年金受給年齢に達したすべての人に毎年一度だけ支給される「冬季燃料費」を通じて,エネルギー料金に対処するための資金援助を行っている.年金,所得扶助,求職者手当,雇用・支援手当など特定の給付を受けている世帯には,極寒の時期には寒冷地手当が支給される.しかし,Table 1に示すように,このような制度が必要としている人々に届く効率性には異論がある.

ケーススタディ:燃料貧困削減のためのパートナーシップ

 このプログラムは,英国公衆衛生協会(UKPHA)の「健康住宅と燃料貧困フォーラム」に端を発し,Defraの資金援助を受けている.このフォーラムは,医療,住宅,エネルギー部門の国家要人とイングランド各地の実務家から構成され,「セントラル・クリアリングハウス」モデルを開発した.その結果,医療,住宅,燃料貧困サービスを連携させた地域パートナーシップのモデルが,弱者へのサービス提供に最も効果的であるとの結論に達した.CCHモデルは,燃料弱者へのアクセス,高リスクグループの特定,紹介と配送システムの合理化,モニタリングと評価プロセスの実施に必要な主要システムとプロセスを特定した.

 CCHモデルはマンチェスターで試験的に導入され,AWARM(Affordable Warmth Access Referral Mechanism)が実施された.保健省が資金を提供したこのパイロットは,サルフォード市議会およびプライマリーケアトラストとのパートナーシップで行われた.

 グレーターマンチェスターは,毎年約10万ポンドをAWARMに投資している.2008年4月以降,AWARMの活動により,セントラルヒーティングシステムや断熱材の新設・交換に60万ポンドを超える投資が行われた.プロジェクトの初年度には,福祉,ボランティア,地方自治体,住宅,医療などの第一線の専門家から1000件以上の紹介があった.12ヶ月の間に1,359人の専門家を養成し,その3分の1は医療関係者,残りは社会福祉,ボランティア/コミュニティサービス,地方自治体,住宅関係の専門家であった.このパイロット版から得られた教訓は以下の通りである:

  • 地方自治体,一般開業医,PCTの間でデータを共有して,紹介の対象を絞り込む方法を改善する機会は数多くある.
  • 一般開業医の患者の電子記録のポップアップシステムは,紹介をワンストップショップに即座に誘導するのに役立つ.
  • エネルギー企業を積極的なプロジェクトパートナーとして関与させることで,脆弱な個人や地域を標的とする新しい方法を特定することができる.

 2010年に資金援助は終了したが,このプロジェクトは地域の供給体制を改善し,燃料貧困削減のための資金援助を受ける人数を増加させた.他の多くの疾病予防プロジェクトと同様,結果はどうであれ,資金は試験的にしか投入されなかった.この場合,短期的に成功した成果を示すプロジェクトが展開されない可能性があることを意味する.

 さらなる情報は以下を参照のこと.www.ukpha.org.uk/fuel-poverty.aspx

Table 1 既存の燃料貧困スキームの目標効率
スキーム名 目標効率  
  燃料不足の受給者の割合(%) 燃料貧困者のうち,対象となる人の割合(%)
Winter Fuel Payments 19%(Boardman, 2010) 50%*
Warm Front 25–40%(NAO, 2009) 30%(WAG, 2005)
Home Energy Efficiency Scheme (Wales) 30%(WAG, 2005) 54%(Boardman, 2010)
EEC2 Priority Group (Includes people on passport benefits) 20% 58–70%(Boardman, 2010 and Lees, 2008)
CERT Priority Group(Includes those on passport benefits and all over 70s) 24%(England)(Tandy, 2010) Unknown

出典:省エネルギー協会(9)

*燃料貧困者の50%は60歳以上と推定される(Boardman, 2010)

 さらに,Warm Homes Discountは,脆弱な顧客に定額のリベートを提供することをエネルギー供給業者に求める新しい強制スキームである.これは,これまでエネルギー供給会社が地域や世帯ごとに臨機応変に提供していた社会料金制度を置き換えたものである.固定価格買取制度(FIT)と再生可能エネルギー熱供給制度(RHI)は,同制度の支援対象となる再生可能エネルギーシステムを導入する事業者に対して資金援助を行うことを目的としている.この制度は,EUのエネルギー消費の20%を再生可能エネルギーでまかなうという拘束力のある目標を定めた「EU再生可能エネルギー指令」の要件を満たすように設計されている.世帯と家主がこのスキームを利用することが期待されている;このような計画は,地方の古い住宅や送電線に接続されていない人など,エネルギー効率を向上させる他の方法が実行不可能または費用対効果の低い人たちにアピールする可能性がある.

 地方自治体の活動は,二酸化炭素排出量と燃料貧困のレベルをそれぞれ地方レベルで監視する国家指標186と187,および1995年から2010年の間に地域の家庭用エネルギー効率を30%向上させる計画を策定することを地方自治体に義務づけた家庭用エネルギー保全法(HECA)の要件によって推進されてきた.一部の自治体では,エネルギー使用量と燃料貧困を削減するための資金を利用するよう,住民に積極的に働きかけている.これらの自治体は,燃料貧困対策のベストプラクティスとして「Beacon」のステータスを与えられ,他の自治体が地域の状況を考慮しながら燃料貧困削減のための効果的な戦略を策定するためのツールキットを作成している.しかし,地方政府への資金提供の削減,HECAの廃止,2011年4月1日から国家指標187が任意となることなどにより,燃料貧困に対する地域活動のさらなる進展が阻まれる可能性がある.

気候変動と健康

 健康の保護と改善,健康格差の縮小および気候変動の緩和は共通の課題である.気候変動に対応するための対策や政策は健康格差の是正に役立ち,またその逆も真である(10).燃料貧困に取り組み,それにより生活の質と健康を改善し,政府の協調行動を主張し,課題を結びつけるのに十分な根拠がある:気候変動は,化学物質や下水汚染による健康被害を含めて,異常気温や気象条件,熱波,洪水,暴風雨による死亡,障害,傷害の増加をもたらすと予測されている(11).より直接的でない長期的な影響としては,洪水やその他の気候関連事象が精神衛生に及ぼす影響があり,不安やうつ病を引き起こす可能性がある(12).

 国内のエネルギー使用量は,英国の二酸化炭素排出量の4分の1を占めている.その排出量の最大の割合(70%以上)は暖房と給湯によるものである(12).断熱性が低いと,現在英国の家庭で使われる暖房費4ポンドのうち約1ポンドが無駄になっていると推定される.住宅から排出される二酸化炭素の3分の1は家庭の暖房に関連しており,既存のストックをよりエネルギー効率の高いものにすることで削減できる可能性がある(13).エネルギーと燃料の効率化は燃料貧困を削減し,健康を改善するメカニズムであり,これらの効率化は気候変動問題にも有益である.

 気候変動が健康に及ぼす影響を最も受けやすいのは,所得水準,住宅の質,健康状態においてすでに困窮している人々であり(14),燃料貧困に陥る可能性の高い群と同じである.英国の低所得者は,裕福な人々に比べて,異常気象の影響を受けやすい都市部に住んでいるため,2003年夏の熱波のときのような熱中症のリスクが高い(15).彼らは防御が不十分な住宅に住み(15),極端な天候や洪水にさらされる地域に住む可能性が高い(16).また,暴風雨や洪水被害など気候変動に伴うリスクに対する保険に加入している可能性も低い(17).住宅の断熱性を向上させることは,気候変動の緩和に役立つだけでなく,夏の過熱や冬の寒さから世帯を守ることにもなる.

 個々の住宅とその周辺地域との間には,気候変動に対する脆弱性だけでなく屋内でのエネルギー使用という点においても強い関係がある.近隣の計画や設計は,太陽エネルギーや緑地などの自然資源を多かれ少なかれ利用することができ,省エネや気候変動の緩和にも役立つ.エネルギー効率の改善,燃料貧困の削減,気候変動の緩和のための介入を検討する際には,より広い環境に配慮する必要がある.

燃料貧困とエネルギー効率

 本セクションでは燃料貧困が人口に対してどのように分布しているか,これが築年数,所有権および熱効率を含む特定の住宅の特徴にどう関連しているかを述べる.

 下のグラフに示したように,燃料貧困のリスクは所得が低下するほど急激に増加する.平均以上の所得で燃料貧困にある世帯はほとんど存在しない.

Figure 1 The risk of fuel poverty according to household income, 2009
Figure 1 The risk of fuel poverty according to household income, 2009

 世帯所得以外では他の因子が燃料貧困にあるか否かに影響する,例えば住宅費用およびその所有権の種類である.Barnes, ButtおよびTomaszewski(19)はFamilies & Children Surveyを用いて黒人の母親,片親あるいはいくつか借金のある家庭の子供は他の子供よりも2倍恒久的に寒冷な屋内温度を経験しやすいことを推定した.世帯総数のある割合は与えられた所有権(例えば民間賃貸,所有者あるいは公営住宅)のため民間賃貸住宅で生活する世帯は燃料貧困にある可能性が高く,民間賃貸の世帯の19%が燃料貧困にあるのに比べて他の所有権では11%である(20).これには様々な理由がある.民間賃貸セクターの入居者は自宅のエネルギー効率を改善するための支援を求めることをためらう可能性があり,それは引越を予定していてもその労力や投資に見合うだけの価値があるとは思えず,家主の同意があれば利用できる選択肢であることを知らなかったり,家主に何らかの費用や迷惑がかかり立ち退きを恐れたりするからである.家主にとっても経済的インセンティブは低く,初期費用のため物件の改善を延期している一方,ほとんどの経済的利益は光熱費の削減を通じて入居者のものとなる.

 Warm FrontやWinter Fuel Paymentなどの政策にも関わらず,イングランドにおける燃料貧困世帯数は2004年から2010年の間に120万から460万に増加した(20).2009年から2010年にかけての冬ではイングランドとウェールズで25400名の死亡が発生した(21).2008年から2009年にかけての燃料貧困の増加の多くはエネルギーコストの上昇に起因し,長期的にはエネルギーコストが上昇し(20),典型的な年間エネルギー費が50%増加する可能性があると推定されている(20).

 燃料貧困に取り組み,燃料価格上昇の影響を限定する最も持続可能な方法はエネルギー効率の高い住宅を建設し,既存の住宅ストックをエネルギー効率の高い水準に改修することである.暖房は家庭でのエネルギー使用の大部分(50%以上)を占めているため,そうすることで人々が燃料貧困に陥ることは極端に難しくなる(12).これは「燃料貧困対策」として知られており,イングランドのすべての物件をSAP81(エネルギー性能証明のバンドB相当)に引き上げることで83%の世帯が燃料貧困から脱却できると推定されている(22).

 新築住宅は2020年までに欧州の指令に従い高いエネルギー効率を実現する必要があるが,既存のストックの一般的なエネルギー効率は現行の建築規制で求められるよりもはるかに低い.標準評価手順(SAP)は政府が承認した住宅のエネルギー効率を測定するための仕組みである:それは暖房,給湯,照明にかかる住宅の一般的な年間エネルギーコストを計算する.SAPスケールは1(低)から100(高)までで構成される.エネルギー性能証明(EPC)バンドはSAPスコアに基づいており,G(低)からA(高)まで設定されている.現在の建築基準ではSAP評価65から81の間,つまりEPCバンドD以上のレベルを要求しているが,下のTable 2に示すように,既存の住宅ストックの50%以上がこの基準を大きく下回っている.

 FおよびGバンドの住宅はエネルギー効率の基準が非常に低い.これらの住宅は,イギリスとウェールズの環境衛生法で定義されたような,過剰な寒さによる危険度カテゴリー1に該当する住宅と広範な相関がある.

 湿気やカビは寒く貧弱な断熱性の住宅でより発生しやすく,熱効率は物件の築年数と強く相関している:平均して1920年代以前に建てられた物件はFおよびGのカテゴリーに入り,平均屋内温度は下のTable 3に示すように物件が古いほど低くなる.

 Fランク及びGランクの住宅は,エネルギー効率が悪いとされるいくつかの要素により特徴づけられる.Energy Saving Trust(1)はこの2つのカテゴリーに該当する物件に次のような傾向があることを強調している:

  • 大型あるいは中型の半戸建てまたは一戸建て住宅でガス暖房と二重ガラス窓を使用しているが,空洞壁が充填されていないもので,一般にFランクとされる.これらはカテゴリーFまたはGに該当する全物件の約3分の1と推定されている.
  • ガスまたは石油を燃焼させる暖房設備がない物件.これらはF-Gランク物件の約半数が該当すると推定されている.
  • 電気または石油暖房で一枚ガラスの小規模な住宅(平屋やテラス).これらはGバンドに該当する傾向があるが,数は少ないと推定される.
  • 大規模な半戸建てまたは一戸建て住宅で,一般に電気または石油暖房,強固な壁,二重ガラスまたは一重ガラスのいずれかを使用.この種の一重ガラスの住宅の平均SAPは20以下である.これらの住宅は大規模で古い田舎の住宅であることが多い.

 このような物件に住む世帯が燃料貧困に陥っているかどうかはその世帯の所得によって決まる.住宅市場の上位に位置する大規模で古い物件に住む世帯の多くは高所得のため燃料貧困に陥っていない可能性がある.しかし,そのような物件に住む世帯は家庭環境や所得が変化するとすぐに燃料貧困に陥るか,そのリスクがあることに変わりはない.さらに,そのような物件に住む世帯は,暖かさを維持するために,住宅の効率を改善するよりも多くの二酸化炭素を排出することになり,環境に悪影響を及ぼす.

Table 2 Percentage of homes in England byEPC banding and SAP rating, 2008.Source: EST 2010(1)
EPC SAP %homes in England
A/B 81+ 0.3
C 69-80 10.0
D 55-68 35.4
E 39-54 37.4
F 21-38 13.4
G 1-20 3.5

 

Table 3 Indoor temperature by age of property (23)
Ages of property Number of dwellings Mean measured temp(°C) Temp under strandard conditions % of households with hall temp < 16°C at standard conditions
Pre 1900 660 17.3 16.7 38.8
1900-44 1,157 17.5 1638 36.0
1945-64 853 17.6 17.0 35.8
1965-80 621 19.1 18.4 17.6
Post 1980 116 19.5 18.7 14.7

田舎の家

 燃料貧困は特に農村部における問題であり,人口の少ないイギリスのコミュニティではエネルギー効率評価がSAP30未満の住宅が半数を占めると推定され,健康被害が大きいと考えられる.2006年には郊外の11%,都市部の10%に対して農村部では21%が燃料貧困に陥っていた(24).農村部の住宅は都市部の住宅に比べて戸建てが多く,規模も大きいため(25),暖房や省エネ化が難しく,コストが高くなる.

 都市部から5-10マイル以上離れたほとんどの地域ではガス管へのアクセスは稀である(25).つまり,地方の多くの過程は燃料費をより多く支払わなければならず,その高い割合が燃料貧困に陥っている(The House of Commons Select Committee on Energy and Climate Change, March 2010, (26)).電気やガス,固形燃料で暖房するため価格が高く,効率が悪くなりやすい.

 地方の住宅の多くは古い建物である.そのため,壁が強固であることが多く(1919年以前に建てられたほぼすべての住宅が強固な壁である),空洞壁(1945年以降に建てられたほぼすべての住宅で見られる)よりも一般に断熱性が低い(25).都市部や田舎町では60%以上の住宅が空洞壁でガス管が通っているのに対し,村では32%,集落では21%にとどまる(25).

 これらの要因は,農村部の住宅のエネルギー効率を改善することが平均して難しく,より費用がかかることを意味しており,変量貧困の削減を目的とした政策や介入作を策定する際に考慮する必要がある.

寒い住宅で生活することの健康への直接的影響

 寒い住宅で生活することの健康への直接的影響は高い死亡率と罹患率の増加に分けられる.これらは高い罹患率(28)同様に冬季における高い死亡率と寒冷温度との関係(27)を記述する長年の根拠である.燃料貧困自体もまた,家計を圧迫する経済的ストレスを通じて,健康,特にメンタルヘルスにおいて有害である.

暖かい住宅があれば,2008年から2009年にかけて35000もの冬季超過死亡を防げた…『公衆衛生白書2010』

死亡率:冬季超過死亡

 下に示すグラフは過去10年間の冬季超過死亡率のレベルを示している.2009年から2010年にかけて,推定25400名の冬季超過死亡があった.これはインフルエンザの低レベルによる前年からの30%の減少を示している(21)にも関わらず,他のヨーロッパ諸国と比較したときに依然として高いレベルにある(Table5参照).

Figure 2 Excess winter deaths 1999-2010
Figure 2 Excess winter deaths 1999-2010

 国家統計局は12月から3月までの死亡数と8月から11月および4月から7月の死者数の平均との差分として冬季超過死亡を計算した.4ヶ月間の代わりに仮にある2ヶ月間が採用された場合,冬季超過死亡のピークは常に夏の谷間よりも40%以上高かった(23).英国において18°C以下では1°Cの低下は3500名の超過死亡に相当する(29).

 冬季超過死亡において役割を果たす多くの因子が存在する.呼吸器系および循環器系疾患の増加は冬季超過死亡率の大部分の原因となり,インフルエンザは主たる死因というよりむしろ寄与因子である(18).寒冷な気候は,特に寒い住宅において,呼吸器系および循環器系疾患の冬季における増加の主な因子であると信じられている(30).

 冬季超過死亡は一般には社会的経済的剥奪には関係しないと研究者たちは記述してきた(32,33,34,35).これは社会的経済的剥奪の指標が熱効率の変数を含まず,剥奪と燃料貧困が関連していても,それらは同一ではないからである.剥奪と冬季超過死亡率の間の有意な相関の欠損の示すところは,英国において剥奪された人たちが公営住宅に住むことは,平均して,もっとエネルギー的に効率的であるということである.

 Wilkinsonらは(23)1986年から1996年にかけて,1991年のEnglish House Condition Surveyから住宅データを郵便番号に紐づけて,イングランドにおいて心血管疾患で死亡した80331名を解析した.心血管疾患での死亡は冬季において年間の残りの期間よりも22.9%高かった.統計的に有意な冬季死亡率が築年数との間に見られ(1980年以降の建築の15%と比較して,1850年以前の建築では28.8%であった),貧弱な熱効率の評価との間にも見られ,勾配はSAP評価にも見られた.

 さらに,冬季超過死亡と屋内の低温との間に強い相関が見られ,最も寒い25%の住宅は,最も暖かい住宅と比較して20%リスクが増加していた.「その所見は,決定的ではないが,冬季死亡と寒冷関連死亡率とは準最適な住宅の暖房と関連しているという強い根拠を提供する」(23).

『心臓発作と脳卒中を含む循環器疾患は,冬季超過死亡の40%を説明する.冬季超過死亡の3分の1は呼吸器疾患である…』[Chief Medical Officer Report, 2009]

 循環器疾患は冬季超過死亡の40%の原因であると信じられており,呼吸器疾患はその3分の1である(31).インフルエンザや低体温症が冬季超過死亡率に直接関与する割合は小さい(32).マークされた冬季死亡率のピークとインフルエンザの流行との間にははっきりした関係があるが,寒い住宅もまたインフルエンザから健康面での合併症の進展において一定の役割を果たしており,インフルエンザの流行が低いレベルの年でも冬季超過死亡率は存在する.例えば,スコットランドにおいて2000年から2001年にかけて推定1500から3000名の冬季超過死亡があり,その年のインフルエンザ率は人口10万人あたり150名以下であった(32).

 高齢者は冬季間の死亡で最大の増加の対象となり,2005年から2006年の冬季間にかけては非冬季間と比較して英国の75歳以上で20200名の死者を記録した.高齢者は寒冷な気候に対してより脆弱な傾向があり,一部には既存の医学的状態を有する傾向があるためである.さらに,高齢者は皮下脂肪が薄いため体温調節が弱く,結果として低体温症に脆弱となる(29).高齢者においては,1°Cの居室の温度低下は1.3mmHgの血圧上昇と関連しており,それは冷たい四肢と深部体温の低下による(33),高齢者は他の人々より長時間住宅にいて,より長時間住宅を暖める必要があるため,燃料貧困の傾向がある(34).

 子供や長期間罹病している人々を含む他のグループもまた脆弱である(30).加えて,社会の最も脆弱な構成員の多くは住宅で多くの時間を過ごし,朝と夕方にだけではなく,終日暖房を要する(31).

Table 4 Excecc winter deaths by age of property (23)
Property age (n=80,331) Winter deaths % excess in winter Risk (95% confidence interval) relative to baseline group P-value for trend*
Pre 1850 701 28.2 1.0 0.001
1850-99 5,469 25.6 0.98 (0.88-1.09) 0.001
1900-18 3,063 24.1 0.97 (0.87-1.08) 0.001
1919-44 6,978 26.0 0.98 (0.89-1.09) 0.001
1945-64 6,709 23.9 0.97 (0.87-1.07) 0.001
1965-80 6,612 17.1 0.91 (0.82-1.01) 0.001
Post 1980 935 15.0 0.90 (0.79-1.02) 0.001

寒冷な住宅に起因する冬季超過死亡数

 冬季超過死亡は寒い住宅でも暖かい住宅でも発生する.しかし,より寒い住宅では最も暖かい住宅よりもより大きな死亡リスクが存在する.この報告の著者らは全冬季死亡の21.5%は最も寒い住宅の4分の1に起因すると推定しており,より寒くなるほど,最も暖かい住宅での冬季超過の住宅よりも多くの死亡が発生する.これは,最も寒い4分の1の住宅においては冬季超過死亡は最も暖かい4分の1の住宅におけるそれよりも3倍近く高いことを意味する.

 この推定はWilkinsonにより2001年に計算されたように,寒い住宅で生活することによる冬季超過死亡の既存のリスク推定に基づいている.English House Condition Surveyが1996年にそのデータを収集するのを辞めて以来,屋内温度を計測した包括的なセットが存在しないため,より最近の推定は得られない.

 Wilkinsonの推定によると,冬においては,25%の最も寒い住宅での死亡率は,全種類の住宅の夏における最小値の1.5倍に上昇する.最も暖かい住宅の25%に対するリスク比は1.3であった.彼の推定は1986年から1996年にかけてのイングランドとウェールズにおける死亡率と3337戸の住宅サンプルに基づいている.

 我々はこれらのリスク比を用いて寒冷な住宅における冬季超過死亡の推定値と,仮に暖かい住宅が適用されたときの死亡率の期待値を計算した.これらの推定値の間の差分は他の因子(例,インフルエンザの流行,大気汚染,外界の寒冷な温度など)よりも住宅が寒冷であることに起因する数である.この値を1986年から1996年の冬季超過死亡の平均値で除算し,この期間の寒い住宅に起因する冬季超過死亡の割合を計算する(21.5%).計算の詳細とモデルを発展させ推定値を計算するための主要な仮定とを巻末に付記した.

国際比較

Healyは冬季超過死亡の解析を実行し,南欧,西欧および北欧諸国における超過死亡率の変動を記述した(35).下のTable 5に超過死亡率の異なるレベルを示す.これらを異なる気候条件でマッチさせる必要がないことは明らかである.より過酷でなく,より温暖な冬の気候の諸国でしばしばより高率に見られることを意味しており(「冬季超過死亡率のパラドックス」),それはギリシャ,英国,スペイン,アイルランドおよびポルトガルである.これらの所見は長年にわたり英国よりも高い建築基準を持つ寒冷な諸国がより低い冬季超過死亡率を有することを明らかにしている.

 この研究のために燃料貧困のレベルが,住宅の状態,住宅暖房の費用および合意に基づくアプローチに基づく熱効率を用いて計算された5(35).この研究で示唆されたのは,温暖な諸国において最高となる冬季超過死亡率のパラドックスは,温暖な気候の諸国はしばしば最悪の屋内熱効率を有するという事実により説明されるということである.下のTable 6は熱効率変数における諸国の違いとそれらがどうやって季節変動に関連するかを示している6.この研究は国家間の空洞壁断熱,二重ガラス窓および床断熱のレベルがそのモデルにおいて5%レベルですべて統計的有意であった.

 その研究はまた冬季超過死亡における生活習慣因子,特に喫煙と肥満の影響を解析している.興味深いことに,これらの因子は非季節性死亡率には強い相関を持つにも関わらず,これらの因子と冬季超過死亡との間には,なんの相関も認められなかった.この研究は,死亡率の変動は屋内温度の差異,公的医療費および社会経済環境に起因すると結論している.

 他の研究は屋内温度と冬季超過死亡との関連を支持しており,屋内暖房のレベル(33)や屋外の低温からの保護(36)と冬季超過死亡率との強い相関を示している.

Table 5 Coefficient of seasonal variation in mortality (CSVM)4 in EU-14 (mean, 1988-97)(35)
  CSVM 95% CI
Finland 0.10 0.07 to 0.13
Germany 0.11 0.09 to 0.13
Netherlands 0.11 0.09 to 0.13
Denmark 0.12 0.10 to 0.14
Luxembourg 0.12 0.08 to 0.16
Belgium 0.13 0.09 to 0.17
France 0.13 0.11 to 0.15
Austria 0.14 0.12 to 0.16
Italy 0.16 0.14 to 0.18
Greece 0.18 0.15 to 0.21
UK 0.18 0.16 to 0.20
Spain 0.21 0.19 to 0.23
Ireland 0.21 0.18 to 0.24
Porutugal 0.28 0.25 to 0.31
Mean 0.16 0.14 to 0.18
Table 6 Coefficient of seasonal variation in mortality and domestic thrmal efficiency in EU-13 (35)
  CSVM Cavity wall insulation (% houses) Roof insulation (% houses) Floor insulation (% houses) Double glazing (% houses)
Finland 0.10 100 100 100 100
Germany 0.11 24 42 15 88
Netherlands 0.11 47 53 27 78
Sweden 0.12 100 100 100 100
Norway 0.12 85 77 88 98
Denmark 0.12 65 76 63 91
Belgium 0.13 42 43 12 62
France 0.13 68 71 24 52
Austria 0.14 26 37 11 53
Greece 0.18 12 16 6 8
UK 0.18 25 90 4 61
Ireland 0.21 42 72 22 33
Porutugal 0.28 6 6 2 3

要約

  • よりエネルギー効率の高い住宅を持つ国はより冬季超過死亡が低い.
  • 冬季超過死亡と低いSAP評価,屋内の低温とは相関がある.
  • 最も寒い4分の1の住宅は最も暖かい住宅のほぼ3倍の冬季超過死亡に相当する.
  • 冬季超過死亡の21.5%は最も寒い4分の1の住宅に起因し,他の住宅よりも寒いこと自体がその理由である.
  • 冬季超過死亡のほぼ40%が心血管疾患に起因する.
  • 冬季超過死亡のほぼ33%が呼吸器疾患に起因する.

罹患率:健康状態

 寒い住宅に関連する主な健康状態は循環器疾患,呼吸器問題および精神疾患である.寒い住宅により影響されるか悪化した他の状態は関節炎やリウマチ同様に一般的なインフルエンザおよび感冒を含んでいる.寒冷な住宅におけるそれらの関連と冬の月間にそれらの状態の上昇するレベルは,系統的に記録される死亡率よりも記録が一層困難である.冬季超過罹患率の文脈を下に概略する.

 屋内の低温の関連するのは病弱(41),冬季超過死亡率(37)であり,住民にとって様々な社会的および経済的問題と同様である(38).老齢化人口,失業率の上昇および在宅で働く人数の増加は住宅を暖房する必要性をさらに重要にする(39).世界保健機関(WHO)は屋内の温度を18度以上に維持するよう勧告しているが,健康に関連する許容温度付近の重要な閾値がいくつか存在する(40).例えば,人は低温に長く曝されるほど健康被害のリスクが高まる(41).脆弱な人にとって影響が悪化し,温度が低下するほど次の被害のリスクが高まる:

  • 16度以下の温度は呼吸機能を悪化させる.
  • 12度以下の温度は心血管系に負担をかける.
  • 6度以下の温度は人を低体温症のリスクにさらす.

 Liddell(42)は過去10年間に実行された燃料貧困の健康への影響の大規模な主要な研究をレビューした.そこにはWarm Front Evaluation, Scottish Central Heating Programme(CHP), New Zealnad Housing, Insulation and health Study(HIHS), Housing, Heating and health Study(HHHS), 住宅の状態およびイギリスの子供とその関連のNATCEN縦断研究,およびUS Children’s Sential Nutritional Assessment Programme(C-SNAP)がある.

 Liddellは結論しているが,寒い住宅からの身体の健康へのリスクにも関わらず,いくつかのプログラムによるエネルギー効率の改善と燃料貧困の削減は,成人の身体の健康に測定可能な控えめな影響があった.しかし,そのような影響の測定の可能性は評価における方法論的制限により妨げられ,それには研究のサンプルサイズが含まれた.エネルギー効率の改善と燃料貧困の削減の健康への影響の測定は,寒い住宅に長期間曝露した結果として寒い住宅に関連する長期間にわたる健康状態を有する成人では特に困難であった.変化により影響を受けやすい小児および死亡や生命を脅かす状態に進展しやすい高リスクの高齢者においては測定はより容易であった.複数の研究にわたる主要な所見は下のポイントに要約し,詳細についてはこの報告でさらに論じた:

  • 若年者の身体の健康の有意な効果には根拠があり,特に幼児の体重増加,入院率および介護者評価の発達状態は,小児の喘息症状の頻度と重症度が自己申告で減少したのと同様であった.
  • メンタルヘルスの影響は特に成人と青年で強く現れた.
  • 住宅の改修後,成人の健康の改善が測定され,控えめではあったが,特に身体的幸福と自己評価による一般的健康と関連していた.
  • 大規模な研究が示唆するのは,死亡率と罹患率における貧弱な住宅機能としての低温の影響は全人口に対してほぼ確実であるということである.

循環器疾患

 冬季超過死亡率の多くは低温に起因している可能性があり,かなりの割合が寒い住宅に起因している可能性がある.循環器疾患に起因する冬季超過死亡は40%(43)から50%(44)の間にあると推定されている.12℃以下の温度は血管の狭小化により血圧の上昇に繋がり(Collins, 1985, (44)),液体が循環系から失われるため血液濃度の上昇にもつながるため,寒冷は循環器の健康に影響する.これは,冬季における呼吸器感染症に起因するフィブリノーゲン濃度の上昇を伴い,寒冷気候における冠動脈血栓症からの死亡の増加と相関している.血圧の上昇は,血液粘稠度の増加とともに,脳卒中と心臓発作のリスクを増加させる(31).

 Barnett(45)は21カ国の35歳から64歳までで1980年から95年までの間に冠動脈イベントを発症した既往のある人を研究し,寒い期間中に全体的にわずかな心臓発作の数の増加を見出した(期間の25%で26.3%のイベント).より著しいことに,致死的イベントは(非致死的イベントと比較して)寒い期間においては暖かい期間よりもより一般的であった.研究者らは女性において男性よりも1.07倍冠動脈イベントに罹患することも見出した.

 寒冷曝露のみが次の数週間以内にそのようなイベントを前進させると示唆されてきた(死亡変位仮説),しかし,Barnettらによる寒冷気候と冠動脈イベントの研究において(45),過去に心臓発作を経験した人においては寒冷期間の冠動脈イベントの(母集団平均を上回る)オッズは全く上昇しなかった.このことは低温の機序が高リスク群と低リスク群の両方に等しく影響していることを示唆している.

 低温と循環器疾患との間の相関には根拠があるにも関わらず,寒い住宅との関連の調査はほとんど存在しない.ある研究では,高齢人口(75歳以上)の毎月1年間における心血管健康をモニターしたものだが,屋内温度と超過循環器不健康との間にはなんの関連も見出されなかった(46).しかし,この研究には弱点があり,温暖な冬に月に一回しか計測を行っておらず,また暖かい住宅に住む人口は戸建てか保護された住宅におり,それは最初の場所ではより健康に脆弱であることを意味しているという事実からなる.

 より最近では,症例対照研究を用いた研究が,住宅の熱効率の改善に伴い循環器健康の著明な改善を認めた(47).この研究では介入対象者の血圧が有意に低下し,自己申告による薬の服用の減少や入院の減少を含む一般的な健康状態の改善を認めたが,一方で住宅が更新されなかった対照群では何の変化も記録されなかった.

 夏の月間においては,熱波が人々の健康に有害である可能性があり,回避可能な付加的死亡の原因となっている可能性がある.2003年8月の熱波の間,温度が普段よりはるかに暑い時,イングランドおよびウェールズにおける超過死亡は2139名であり(48),ほとんどが循環器疾患を経由していた.これは特にロンドン地域に住む75歳以上で著明であり(48),低温に倒しても最も脆弱な高齢人口における余分な熱の脆弱性が見出されたことを示している.しかし,都市部には余分な熱のより高いリスクがある.多くの熱効率の改善は,暑いにせよ寒いにせよ,屋外の極端な温度から保護しそうなものだが,夏の超過死亡の問題は住宅の熱効率の改善を実行する際には考慮されるべきであり,特に考慮すべきなのは使用される材料と適切な換気である.英国において異常に暑い夏が夏の超過死亡の原因となっている根拠があるにも関わらず,これらの夏の超過死亡率は冬の超過死亡と比較すると相対的に低い.夏季超過死亡率は2003年8月の熱波のようにかなりのメディアの注目を集める.夏季超過死亡率はイングランドとウェールズの範囲ではより少なく,それでも注目に値する.循環器罹患率と死亡率は英国の夏の最も暑い時期よりも冬期においてより高くなる.冬の月間における心臓発作の数の増加および寒い住宅と関連する非致死的心臓発作と脳卒中の解析は,冬季間の増加する心血管罹患率の原因を探索する明らかな道である.

呼吸器問題

 寒冷な空気は正常な気道の防御機能に影響し,気管狭窄を増加させ,粘液産生と粘液クリアランスを低下させる.呼吸器問題と低温の関係には,患者と医療サービスとの接触の季節性レベルにおいて根拠がある.冬季間の成人の接触の増加は燃料貧困と相関があり(49),小児の症状と接触の増加は寒い住宅と強い相関がある(42).

 Hajar, KovatsおよびLacowyczは(50)気道感染症のための一般開業医紹介が5℃以下では1度下がるごとに19%増加する可能性があることを見出した.気道状態と虚血性心疾患による入院も冬季間は実質的に増加する(51).

 AfzaおよびBridgmanは彼らの論文(52)で,1995年から2000年にかけてNorth Stafordshire地区の冬季超過入院(11月から2月)の負担の呼吸器疾患の貢献を支持している.緊急入院と関連する呼吸器疾患は冬季間には2倍に増えることを見出した.寒く湿度の高い住宅はカビの成長も促進し,呼吸器感染症への抵抗力を低下させ,ゆえに冬季間の呼吸器罹患率のリスクが増加する(31).

 Gilchristの研究(53)は燃料貧困に関連する罹患率の計測に焦点を当てており,呼吸器による緊急入院の費用とその後の入院中の死亡率である.その論文は燃料貧困と死亡率とが関連するかを結論することはできなかったが,燃料貧困のリスクが上昇すると罹患率が上昇することを示し,根底にある冬自体の上に特に12月に影響が大きかった.年齢と性別の影響が特に著明で,高齢者でより高く,女性でより低かった.

 英国の16都市部で10年間(1992年から2001年にかけて)65歳以上の下気道感染(LRTI)と上気道感染(URTI)による一般開業医からの日毎の紹介に対する低温の短期的影響の時系列分析が実施された(54).これは全16地域における下気道感染による紹介の増加と低温との相関を示していた.わずかに弱い相関が上気道感染による紹介との間で見られた.

 重要なことだが,Newhamロンドン自治区における65歳以上の居住者を観察した大規模研究があり,計算された「冬季超過死亡率」(EWM)は全呼吸器診断コードのための緊急病院エピソードに基づいており,これらに対して住宅のエネルギー効率,低所得,世帯主の年齢および低占拠の因子を含む燃料貧困指数(FPI)を評価した.燃料貧困指数は冬季超過死亡率を予測することが示され,エネルギー効率の高い住宅と高齢者における冬季呼吸器疾患の相関の根拠への支持を示している(28).

 Barnes, ButtおよびTomaszewskiは(19)Families & Children Surveyを用いて13%の子供が2001年から2005年にかけて少なくとも1年間は不適切な暖房の住宅で過ごしたと推定した.湿気は寒く不十分な断熱の家ほどよく発生し,しばしば喘息のようなアレルギー反応を引き起こすカビを生み出す結果となる.湿気やカビの多い家に住む子供は乾燥した家の1.5倍から3倍,喘息の症状や他の呼吸状態である咳や喘鳴を起こしやすい(55)(Peelら1998年,(19)).不適切な暖房および貧弱な状態の住宅でずっと生活している子供は喘息や気管支炎などの胸部および呼吸の問題に2倍かかりやすい(19).

 このようにして喘息の進展した子供は長期間,おそらくは生涯にわたって罹患しやすく,特に2009年に与えられた推定では英国の110万人の子供が喘息の影響を受けている(39).Brambleryらは(56)喘息のコストは年間で最低でも8.47億ユーロに上り,2008年の国立NHSの予算の1%未満に相当すると推定している(39).

 適切な暖房システムは気管支喘息を改善させ,住宅のエネルギー改善は喘息や繰り返す気道感染を有する子供の学校の病欠日数を80%減少させることが示された(57).

 Warm Front Programmeは呼吸器問題を罹患する参加者の大部分が呼吸の改善を報告したと示したが,小さいが有意な割合が新しい暖房システムは彼らの胸部状態を悪化させたと感じた(58).Boneらも(59)住宅のエネルギー効率の計測および健康への負の影響に関する数々の懸念を強調した.増加する気密性の高い住宅での不十分な換気はラドンや一酸化炭素,二酸化窒素およびホルムアルデヒドなどの屋内汚染物質濃度の増加をもたらし,より高い相対湿度はカビやダニの成長を促進する可能性があり,それらは喘息の進展や悪化に関係する.

 熱波の状態における過熱のリスクは,疾病と死亡のリスクを増加させ,最も一般的には心血管および呼吸器疾患だが,さらなる懸念である.これらの影響はしかし,住宅の熱効率自体の結果ではなく,むしろ換気システムの不適切な選択と維持および建物の設計と改修の結果であり,それらは対処すべき課題である.住宅での増加する気密性を受け取ったケースの少数者における呼吸器の健康の悪化をめぐるこれらの所見は,既存のストックの適切かつ高性能な改修を確保することの重要性を繰り返している.

メンタルヘルス

 2006年にShelterにより実行された研究の示唆するところでは,寒い家を含む悪い状態の住宅の子供は,不安やうつなどのメンタルヘルスに問題を抱えやすく,髄膜炎にかかりやすく,呼吸器に問題を抱えており,長期間の疾病と障害を経験しやすく,身体成長の遅延と認知発達の遅延を経験しやすい(60).これらの有害な結果は住宅と関連する物質的剥奪との直接的影響をともに反映している.

 Warm FrontおよびScottish CHP evaluationは成人のメンタルヘルスへの影響を評価し,ともにメンタルヘルス領域において,特に境界不安とうつにとって効果は顕著であったことを見出した.短期および中期において,Warm Frontパッケージを受け取ることはメンタルヘルスの有意な改善に相関した.寝室の平均温度が上昇するにつれ,居住者のうつを回避する機会が増えることが示された.寝室温度が21℃の居住者は15℃の人と比較してうつや不安にかかるのが50%少なくなる傾向があった(61).

 New Zealand HIHS studyではさらに大きな影響が見られた.これはおそらくNew Zealand studyにおける全世帯が臨床的リスクにあったという事実によるためと説明された.「燃料貧困と不健康(特に仮に一方が他方を悪化させると認識されているなら)はメンタルヘルスにおいて,より多様な範囲のより健康的な世帯が明らかである可能性があるよりもはるかに高い料金を発生させる」(42)

 NATCEN studyは手頃な値段の暖かさの欠乏は若年者にとって複数のメンタルヘルスのリスクと相関していることを見出し,これは4つ以上の負のメンタルヘルス症状が現れたことを意味している.暖かい住宅で生活している若年者の4%と比較して28%がそのリスクがあると分類された(19).暖かい家で生活する群の2%に対して,寒い住宅で生活している子供のかなりの割合である10%が家族の中で不幸だと感じていた.補完的研究が次の事実を指摘した.寒い家で生活する若年者は家の外の他の会場で休息とプライバシーを見つけようとしており,それは家ではさらなるメンタルヘルスのリスクに曝されているからだと(62,63).

他の状態

 寒冷曝露および冬季関連を示すことにより悪化し複雑化した医学的状態は糖尿病の合併症,特定の種類の潰瘍の悪化,変形性関節症の膝の疼痛の重大性および股関節の骨折を含む(29).慢性状態もまた身体の代謝を低下させる.それは身体の熱産生が低下することを意味しており,一方で脳卒中やパーキンソン病および認知症は身体の熱産生と保護を遅らせる(29).寒い住宅はまた退院後の回復を遅らせる可能性がある(64).

 Warm Front健康影響評価の一部として,Gilbertsonらは(58)5都市圏からのスキームのもとで住宅エネルギー改善を受け取った49世帯に半構造化インタビューを行った.ほとんど全てが改善しうる制御可能な暖かさを報告した.参加者の3分の2が快適さが改善したと報告した一方,移動が制限されている人は全員より暖かい住宅が有益であると認識していた.20%が冬の間軽度の病気が少なかったと報告した.Warm Front健康影響評価はまたメンタルヘルスの改善と心の安定を見出した.24.5%がよりリラックスして幸福と感じていると報告し,55.1%が気分が良くなったと報告し,26.5%が快適で快温だと報告した(58).

 Warm Front健康影響調査は対応者の24.5%が関節炎などの慢性状態が緩和したことを見出した(30).

 北アイルランドの農村において住宅にエネルギー効率測定を装着することで燃料貧困に取り組むプログラムの調査ベースの評価はエネルギー効率介入が健康と幸福における改善につながり,住宅における快適性レベルを増加させ,医療サービスの利用を減少させることを示した.重要な所見は結露発生の減少,関節炎・リウマチを報告する人の数の減少,医療サービスの利用の減少,新しい暖房システムを装着した人の温度の満足感の増加,および装着しなかった人には利益の取り込みの増加があったことを含む(70).

 寒冷状態は軽い疾病を増加させる可能性がある.低温では免疫系がより鈍くなる一方で感冒は冷たい鼻ではより早く増殖し,これは感冒がより早く進行することを意味している.既存の状態を有する患者にとって,これは慢性閉塞性肺疾患(COPD)を持つ患者にとって胸部感染症に至るような,より重大な結果をもたらす可能性がある(44).

要約

  • 低温と心血管疾患および呼吸器疾患との間には強い相関があり,燃料貧困と寒い住宅が関連している.
  • 寒い住宅で生活する子供は暖かい住宅で生活する子供と比較して約2倍様々な呼吸器問題に罹患しやすい.
  • どの年齢群でもメンタルヘルスは燃料貧困と寒い住宅に負の影響を受けている.
  • 寒い住宅で生活する青年の4分の1以上が複数のメンタルヘルス上の問題のリスクを有する.
  • 寒い住宅は風邪やインフルエンザのような軽度の疾病を増加させ,関節炎やリウマチなどの既存の状態を悪化させる.

寒い住宅で生活することの健康への間接的影響

 Evans(65)は,より広範な住宅の質と子どもの健康と幸福に関する研究を行った.住宅の質は,室内温度やその他の変数(構造の質,プライバシー,危険,清潔・雑然,子供のリソース)を含む観察者が評価した標準化指数に基づいている7.その結果,世帯収入とは無関係に,質の悪い住宅に住む子どもは,質の良い住宅に住む子どもに比べて,心理的症状が強く,課題の持続性が低いことがわかった.男女差はなかった.この研究により,住宅の質が子どもの心理的健康と関連するだけでなく,子どものモチベーションのある側面にも影響を与える可能性があることがわかった.動機づけのデータから,劣悪な住宅環境に慢性的にさらされると,無力感が強くなる可能性があることが示唆されている8.

 健康関連のQOLの有意な改善は,住宅断熱材の無作為化比較試験で見出され,低所得世帯を対象にした住宅改良は,社会機能および身体的・精神的幸福(呼吸器症状を含む)の両方を有意に改善したと結論付けている((41)引用(66)参照).

 エネルギー効率のレベルは,生活機会や,可処分所得を食料や衣料など他の基本的なものにどう使うかに影響するため,低所得者ほど深刻な影響を受ける(14).貧しい家庭は,「暖房か食事か」という選択に直面することになる.十分で健康的な食事(肥満や栄養失調など健康への影響が明らかなもの)に費やすお金を減らすか,家を適度な温度に暖めるために費やすお金を減らすか,どちらかである.

 暖かい家は,料理や栄養の改善により,身体的な健康効果をもたらす可能性がある.Warm Frontの健康影響評価の一環としての参加世帯へのインタビューでは,世帯主の 10% がコスト削減のおかげで,より多くのより良い品質の食品を購入できると感じ,20% が以前の寒いキッチンが快適に作業できるようになったため,調理が改善されたと報告していることがわかった(58).

 Bhattacharyaら(67)は,アメリカの貧困家庭において,寒冷期が家計と栄養面に与える影響を調査した.彼らの結果は,これらの家族が寒さの間,余分に燃料を消費するのと同じくらい食料への支出を減らす傾向があり,子供と大人の両方が冬の間にカロリー摂取量を約200キロカロリー減らしたことを示唆した.一方,裕福な家庭は食料への支出を増やしており,貧困家庭の方が寒さの間接的な影響を受けやすいことを示している.

 寒くて湿気の多い家では,関節炎の症状が出るリスクが高まる.気温が下がると,体力や手先の器用さが低下し,思わぬ怪我をする危険性が高まる.寒い家は高齢者の転倒リスクを高める(31).冬場の寒い家では,死亡事故を含む家庭内事故が多発している.その結果,長時間動かずにいることになり,保温がさらに難しくなる(44).

 高齢者の社会的孤立は,寒い家に住んでいることで悪化する.燃料代が高くて外出できない,寒い家に帰るのが怖い,寒い家に友人を招くのが嫌だ,など(44).家を暖かく保つことができない高齢者,寒さによって健康状態が悪化したり,寒さによって怪我を負ったりした高齢者は,より多くのケアを必要とするか,または在宅ケアに入る必要があり,国の経済的負担を増大させる(44).

 Warm Frontプログラムの後に実施されたアンケートでは,室内の寒さが健康上の問題を引き起こすのではなく,むしろ悪化させると考える回答者もいた.これは,因果関係がないというよりも,一般的な考え方を示しているのかもしれないが,回答者の側では,住宅の寒さが幸福感に影響を与えるという認識が明確であることも示している.特に,回答者は,暖かい家が社会的な関係や精神的な健康に良い影響を与えることを確認した(68).

改善された住宅の社会的利益

 既存の住宅の熱効率を改善することで得られる主なメリットは居住者の健康への有益な影響と,暖房に要する二酸化炭素排出量の削減である.しかし暖かい家や熱効率への投資のメリットは他にも存在する.

 ある研究では,暖房が不十分な住居で生活している期間が長いほど「すべての子供に大切なこと」の成果の枠組みの範囲内で複数のネガティブな結果をもたらすことと有意に相関することが明らかになった.例えば,暖房が不十分な住宅に永続的に生活している子供の67%が過去1年間に休日がなかったのに対して,暖房が不十分な住宅に短期間生活している子供では50%で,安全だと感じる可能性が高く,不登校になる可能性も低かった(19).

 さらに,暖房が不十分な住宅で生活している期間の長さは,家で宿題をする静かな時間がないことと有意に相関している(19).これは,家族が暖房を部分的にしか使わないほど余裕がなく,暖房は最も使用頻度の高い(つまり最も騒音の大きい)部屋に集中している可能性がある.これは子供の学歴に影響を与える可能性があり,したがってその後の人生における職業の機会に影響を与える可能性がある(31).教育や労働の因子は長期的な健康の決定要因として重要である(66):寒い住宅とその家庭生活や幼少期への影響は,人生の他の領域にも大きな比重を占め,長期的な健康アウトカムに影響を与える.

 またエネルギー効率化対策への投資は地域の雇用を増やし,地域経済を向上させることで地域の再生に貢献することができる(10).英国全体で現在試行されているCommunity Energy Saving Programmeなどの地域ベースのアプローチはこれを実現するのに役立つだろう.このような投資はグリーン経済に活力を与え,建築業界における労働機会,建築労働者のスキルアップの機会をもたらすことができる(14).

要約

  • 寒い住宅は子供の学業成績,情緒的健康,回復力に悪影響を及ぼす.
  • 燃料貧困は食事の機会と選択に悪影響を及ぼす.
  • 寒い住宅は手先の器用さに悪影響を与え,家庭内での事故や怪我のリスクを高める.
  • 住宅のエネルギー効率に投資することは労働市場や経済の活性化につながり,建築労働者のスキルアップの機会も創出することができる.

結論

 寒冷な住宅や燃料貧困は,健康に直接的かつ即時的な影響を与えるだけでなく,間接的な影響や,幸福度や生活機会,さらには気候変動にも広く影響を与える.この論文で検討された証拠は,寒い住宅が,心血管系や呼吸器系の疾病率の点で住民に,また冬季の死亡率の点で高齢者に劇的な影響を与えることを示している.また,燃料貧困が様々なグループのメンタルヘルスに深刻な影響を与え,同時に子どもや若者の幸福や機会にも影響を与えることを明らかにしている.

 エネルギー効率の悪い住宅に対処し,すべての住宅を熱効率の最低基準に引き上げることは,様々な社会経済的背景を持つ世帯がそのような住宅に居住していると考えられるが,最貧困世帯に最も強いプラスの影響を与えるだろう.

 2008年に開発された燃料価格上昇の中位シナリオモデルでは,住宅ストックのエネルギー性能の改善と低所得世帯の所得の増加が現在の割合でしか維持されない場合,イングランドの燃料貧困は2016年までに400万人に急増すると予測された(69).燃料価格の上昇幅がモデルの予測よりはるかに大きかったため,現在,燃料貧困はすでにこのレベルまで上昇している:既存の住宅ストックの現在のエネルギー効率では,このような高い上昇を緩和することはできない.しかし,現在および近い将来の基準で建てられた住宅に住んでいる人が,燃料貧困に陥る危険性があるとは考えにくい(70).政府は,エネルギー効率基準の改善を優先事項とすることを目指すべきである:既存の住宅ストックにおける一定の最低基準を達成するためのあらゆる前進は,現在および将来の世帯の燃料貧困のリスクを低減し,関連する健康上の利益をもたらすだろう.

 Energy Savings Trustは,すべてのFおよびGの住宅をEバンドに改善するための総費用は125億ポンドになると試算している.その他,すべての燃料貧困家庭をSAP81に改修した場合の試算は,イングランドで210〜280億ポンド,英国全体で490〜640億ポンドとされている(71).イングランドのすべての住宅をEPC Eバンドにすると,940万トンの二酸化炭素が削減され,英国の二酸化炭素純排出量の2%弱に相当する.住宅をSAP81にする大規模なエネルギー効率改善プログラムは,燃料貧困世帯の燃料費を半減させ,83%の燃料貧困世帯を燃料貧困から救うと同時に,家庭のエネルギー需要に関連する二酸化炭素排出を50%以上削減すると推定されている(22).

“民間住宅の寒さが原因で冬に関連する病気を治療するためにNHSが負担する年間コストは8億5900万ポンドである.これには,社会サービスによる追加支出や,仕事を休んだことによる経済的損失は含まれていない.NHSと国が負担する総費用は不明である.最近の研究では,家を暖かく保つために1ポンドを投資すると,NHSの健康コストを42ペンス節約できることが示された… “[最高医療責任者レポート,2009 年]

 NHSのコストは主に死亡率よりも罹患率に関連しており,2009年の保健省は,風邪に関連する死亡1件につき非致死的入院が8件あると推定している(39).1年のうち最も寒い時期にNHSの支出が2%増加したと報告されており(Hansard 1998, cited in (39)),Brenda Boardmanは,寒さによる体調不良がNHSに与える年間コストはほぼ確実に10億ポンドを超えていると推定している(39).

 イングランドのすべての家庭を改善するための投資は,エネルギー消費とNHSコストの節約によって回収されるだろう.気候変動を緩和することで,さらなる節約を実現する一方,寒冷住宅や燃料貧困の影響を受けているすべての世帯の命を救い,健康と生活の質を改善することで,大規模な環境および社会的利益を達成することができる.

 既存ストックのエネルギー効率を向上させることは,多くの複数の利益を確保するための唯一の長期的に持続可能な方法である:環境的利益,健康的利益,気候変動の緩和,健康と環境の不平等を解消することによる社会的利益である.また,グリーン経済に関連して経済と労働市場を刺激し,建築建設や関連部門の労働者のスキルアップの機会を提供する良いテコとなる.

 2009年の最高医学責任者の報告書や最近の公衆衛生白書など,政府の政策文書や報告書は,寒い住宅や燃料貧困が人々の健康や幸福に与える具体的な影響を認めている.しかし,政府は健康と寒冷な住宅との関連性を認識し,燃料貧困と二酸化炭素排出の削減を支持すると表明しながら,規制,目標設定,ガイドライン,資金提供を通じてこの課題を支援するという明確な約束をしないことには明確な矛盾がある.Energy Company Obligation(ECO)の将来の水準と配置に関する重要な詳細が明らかになる前に,健康増進の実績が明確に報告されているWarm Frontの最近の削減は,特に懸念されるものである.地方自治体への資金削減が,燃料貧困やエネルギー効率化プログラムへの投資に与える影響は,特に国家指標 187の廃止やHome Energy Conservation Actの廃止と合わせると,非常に不利になる可能性が高い.

 燃料貧困に対処するためには,年間 30-80 億ポンドが必要と推定されるが(71),ECO はエネルギー会社の拠出による約10億ポンドの投資しか実施しない計画であり(72),他の既存の制度や要件は削減または廃止されつつある.住宅の熱効率の悪さという問題に対処するための政府の現在の支援と財政的コミットメントは,国民の健康と福祉を改善し,気候変動の緩和に役立つ可能性があるにもかかわらず,依然として不十分である.

介入の有効性を確保する

 いくつかの研究(74;79)では,熱効率の改善を目的とした介入後,エネルギー使用量と熱的快適性の間にトレードオフが生じたことが示されている.また,熱効率向上の恩恵は,余分な暖かさではなく,燃料消費量の削減という形で受け取られているケースもあり,可処分所得の多さを示していると思われる(68).このようなケースは高齢者に多く,新しい暖房器具の操作が難しかったり,効率化が消費量にどのように影響するかが分からず,エネルギー料金の上昇を恐れたりしたのである.

 これらの問題は,介入の潜在的な健康上の利点を損なう可能性がある.しかし,影響を受けやすい世帯を特定し,熱効率への介入を,その後のトレードオフを回避することを目的とした他の行動で補うことは可能である.

 Warm Frontプログラムによる改善を受けた世帯の多くは,改善後も寒い家を維持することを希望していると報告した.このような嗜好性は,生涯を通じて経験する低温への長期的な適応と,健康的な温度を構成するものについての一般的な信念に基づくものであった(73).

 特に高齢者の住宅での介入は,新しい暖房設備の使用に関するトレーニングや,理想的には燃料消費量を示すことができる使いやすいスマートメーターを併用することが望ましい.このようなトレーニングには,健康的な室内温度とは何かという情報も含まれているはずである.

 暖房や効率改善が困難な場合,および/または世帯収入が極端に低い場合,最悪の住宅をより高い水準に改善しても,多くの世帯が燃料貧困に陥ることになる.このようなケースを特定し,リスクのある家庭にはエネルギー料金の支払いを金銭的に支援することを検討する必要があり,そうすれば健康にも良い影響を与えることができる.さらに言えば,政府は,そうした住宅をバンドAやBのような高効率基準に改修するための投資を確保するための戦略を実施することを検討すべきである.これは健康と環境の両面でメリットがあり,現在と将来の家庭がエネルギー価格の上昇に影響されにくくなる.

 ある調査によると,既設の温度が16.5℃の場合,エネルギー効率改善のメリットの約30%が温度上昇として,残りがエネルギー節約として受け取られるとのことである.つまり,介入の大部分は,健康と環境に関する複数の利益をもたらすということである.非常に貧しい水準の住宅や非常に低所得の世帯など,既存の温度が14℃と低かった場合,50%の省エネが達成され,残りは温度上昇として受け取られる.すでに住宅の平均温度が20℃に保たれている状況では,エネルギー効率の改善により100%の省エネを達成することができる(74).

 つまり,リスクのある家庭のトレードオフの問題が解決されれば,エネルギー効率化の介入は常に複数の健康・環境上の利益をもたらすということである.

政策提言

 上記のセクションでレビューした研究は,寒い住宅や燃料貧困が身体的・精神的健康に影響を与えるだけでなく,住宅の熱効率の改善や燃料貧困の削減を目的とした政策が死亡率や罹患率を減らすことができることを示している.このセクションでは,政策展開のためのいくつかの領域を提案し,寒い住宅を改善し,燃料貧困を減らすために最大の影響を与えると思われる介入を強調する.

 Energy Saving Trust(EST)は,すべての住宅をSAP39に改善し,それによってすべてのFおよびG住宅(2008年では17%)を排除するために必要な対策について分析を行った.主な対策は,ロフト設置,空洞壁の完全断熱,最新のガス濃縮ボイラー,二重ガラスである.しかし,Eバンドにするのに5000ポンド以上かかる,まともな住宅を作るのが困難な住宅も少なからず存在する.これらは,政策支援策を検討する際に無視できない.

 住宅のエネルギー効率を向上させることは,すべてのコミュニティで,社会的な勾配を越えて,「簡単」なところだけでなく,行わなければならないのである.また,民間賃貸住宅の入居者や,地方の古い住宅など改修が困難な住宅に住む世帯など,最も緊急に支援を必要としている世帯がいることもある.

  1. 脆弱な消費者に負担をかけずに住宅のエネルギー効率を改善し,燃料貧困を減らし,低所得者の健康を改善するためのプログラムと資金を維持することが極めて重要である.このような資金は,リニューアルされたWarm Front Schemeや,現在計画中のEnergy Company Obligation(ECO)を通じて,低所得世帯に提供されるべきである.ECOは,先行投資ではないものの,所得に関係なく消費者にコストを転嫁し,長期的に節約できる可能性があるとされている.この制度には十分な資金が必要であり,その詳細については,低所得世帯や社会的弱者の負担が免除されることを保証する必要がある.
  2. 対象となる世帯に断熱・暖房の改善パッケージを提供するWarm Frontプログラムは,精神衛生に良い影響を与え,子供の呼吸器系の問題を緩和し,高齢者の死亡を減らすことが示されている(61).エネルギー価格の上昇,人口の高齢化,気候変動の緩和と異常気象への適応の必要性を考慮し,Warm Front Schemeを少なくともCSR以前の水準に更新するだけでなく,その適用基準を現在の提案のように制限するのではなく,拡大するか少なくとも維持することを提言するものである.
  3. すべての所有権にわたる世帯が自宅を改修できるように,資金調達メカニズムを整備する必要がある.しかし,どの地域でも低所得世帯を支援する以上に,他の2つのレベルでもより強力な介入が必要である:Communities and Local Government Committee (75)が提案したように,エネルギーに焦点を当てた新しいDecent Homes Standardの導入により,質の悪い住宅がターゲットにされるべきである.低所得世帯は,すべての社会的住宅の最低SAP基準70を提案したHome Energy Management Strategyによって提案されたように,公営住宅部門に対するターゲットをさらに増やすことによっても支援できるだろうし,民間賃貸部門の効率を改善するために家主に関わる行動をさらに進めることもできる(76).
  4. 民間の賃貸住宅に住む入居者が,自宅のエネルギー効率を改善するための支援を求めるのをためらうようなことがないよう,より適切な法律を整備しなければならない.政府は,燃料貧困諮問グループ(20)が支持する民間賃貸部門に対する何らかの形の最低エネルギー効率規制を含め,既存ストックのエネルギー効率を向上させるための目標を策定すべきである.これは,地方自治体が保有する家主の法定登録によって促進され,劣悪な住宅,危険にさらされている世帯を特定し,規制を実施するのに役立つ可能性がある.これは,民間のFおよびGの賃貸物件がバンドEに引き上げられた場合,15万世帯を燃料貧困から引き上げる可能性がある(72).
  5. また,エネルギー効率に焦点を当てた,民間部門に特化した住宅の品質に関する新たな国家指標を,地方公共団体が利用できるようにすることを提言する.燃料貧困は,提案されている公衆衛生成果の枠組み(77)の指標として含まれているが,同時に公衆衛生からの責任の多くが地方自治体に移されることになる.この指標を実施し,監視するためには,地域レベルでの燃料貧困に関するデータを収集し続けることが基本である.
  6. エネルギー基準やガイドラインは,住宅を気密にする際の十分な換気のための品質基準と連動させる必要がある.特に,二重ガラスやドラフトプルーフなどの「即時の措置」を実施する場合には,このような対策が必要である.大規模な改修や再生プロジェクトでは,日射熱の利用を考慮すると同時に,遮光やシェルターベルトによって夏のオーバーヒートを避ける必要がある.建材の中には,ロックウールやポリスチレンなどの軽量な素材よりも,密度の高い天然素材の方が夏のオーバーヒートを防ぐのに有効なものがある.政府出資のプロジェクトでは,両方の問題に対処する材料を指定する必要がある.
  7. 2016年までにすべてのFおよびG評価住宅をE基準に確実に改修することは,二酸化炭素排出量削減目標の達成に向けた基本的なステップであり,建物のエネルギー性能に関するEU政策指令(4)が示唆するように,既存の住宅ストックがさらなる改築を受ける際にほぼゼロエネルギー基準への改修が可能な状態にあることを保証している.従って,実行可能な限り,住宅を可能な限り高い水準に改善することが推奨される.最悪の住宅を含むいくつかのケースで,費用対効果が高い場合は,取り壊しを検討し,現在の水準で建て直すことで,将来的にさらなる支出を避けることができる.例えば,内壁の断熱材と窓の交換は,通常,同時に行うのが最も費用対効果が高い.
  8. 燃料貧困に取り組むことを目的としたこれまでの政府の政策は,農村地域が直面する問題に公平に対処するものではなかった.二重ガラスへの融資を支援する政策手段はなく,強固な空洞壁断熱への融資を支援する政策手段も限られており,非効率な住宅の所有者に電気暖房設備からの切り替えを促す強力なインセンティブはない(1).上記を実現するための政策手段やインセンティブをグリーンディールに盛り込むことが推奨される.ガスのない物件を支援するための資金が不足しており,遠隔地では,家庭のエネルギー効率化対策にかかるコストが高くなっている(26).特にFITとRHIは,地方の住宅に住む低所得世帯にさらなる支援を提供するために適合させるべきである.

付記

モデル開発および寒冷住宅に起因する冬季超過死亡の推定値の算出方法

 計算の詳細は以下の通りである.この計算は,寒冷住宅に起因する割合を推定するための単純化されたモデルに基づいており,いくつかの重要な仮定を置いている.

  1. 寒い家と暖かい家での相対死亡リスクの差は,冬の 4 か月間一定であった.
  2. 冬以外の月の平均リスクは,夏の最小値と冬の4ヶ月の平均値の中間の値であった.
  3. 最も寒い25%の住宅で危険にさらされている人々は,一般人口の4分の1を占め,年齢と性別のプロファイルも同じであった.

 他の期間についても,寒冷住宅と温暖住宅のリスクの推定値があれば,同様の計算が可能である.外気温やインフルエンザの流行がこのリスクの差にどのように影響するかを予測することができないため,他の期間でもリスクの差が同じであると仮定することはできない.

 計算方法は以下の通りである.

ONSのデータから取得

A            1985年6月から1995年6月までの冬季超過死亡総数=368,850

A1          1986-1996年の登録死亡者総数 = 6,251,491

計算

B            平均EWD (A÷11)

C            月平均EWD(B÷4)

D           EWDを除く総死亡者数(A1-A)

E            EWDを除く月平均死亡数(D/(12×11))

F            夏の平均最低死亡(E-C)

G           最も寒い25%の住宅での月別冬期死亡者数(F×1.5÷4)

H           最も暖かい住宅の死亡率から25%の住宅で予想される冬の月別死亡者数(F×1.3÷4)

I             最も寒い25%の住宅による冬季の月別死亡者数(G-H)

J             冬期間の最も寒い25%の住宅による死亡者数(I×4)

K            寒冷地住宅の25%に起因する割合(J/B)

 すべての推定値は1986-1996年の期間に基づく リスクファクターはWilkinson et al. 2001 1986-1996年の期間の登録死亡数,死亡率,EWDの推定値はすべてONSデータから取得または導出されている.

巻末資料

1 定義では暖房に重点が置かれているが,燃料貧困の定義における燃料費には,給湯,照明・家電使用,調理費などの支出も含まれる.

2 主なテスト済みまたは障害関連給付のいずれかを受給している者と定義される.

3 特定の所得手当や障害手当を受給しており,70歳以上の者.

4 CSVMは,冬季(12-3月)の死亡率が他の2三半期(4-7月,8-9月)の平均値と比較して増加する割合のこと.

5 「合意形成アプローチ」とは,世論が決定する生活水準の直接的な尺度を調べ,その不足を強制される対象人口を特定することで貧困を測定する方法である.

6 CSVMは,冬季(12-3月)の死亡率が他の2三半期(4-7月,8-9月)の平均と比較して比例して増加する.

7 この指標は88項目からなり,訓練された独立したオブザーバーが,指標に記載された基準に従って0から2の間で採点したものである.

8 ここでは,「学習性無力感」の定義を使用する.人間は,周囲の環境をコントロールできない状態が続くと,状況を改善したり,より良い結果を得たり,自分自身の行動や環境を変えようとしなくなる行動特性である.

9 2008年に子ども・学校・家庭省が作成した子どもの健康と幸福の指標の枠組みである(http://www.dcsf.gov.uk/childrensplan/ downloads/ECM%20outcomes%20framework. pdf).

10 2009年の英国の純二酸化炭素排出量は473.7Mt(http://www.decc.gov.uk/assets/decc/ Statistics/climate_change/1214-stat-rel-uk-ghgemissions-2009-final.pdf).

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