前回の記事(国土数値情報の二次医療圏テーブルの文字化けを解決する,医療機関テーブルに二次医療圏コードを追加する)では医療圏テーブル,医療機関テーブルを整備した.今回は人口動態予測を元に2045年の医療需給を予測する.
人口データベース
二次医療圏ごとの人口動態予測
二次医療圏ごとの人口動態予測は日本医師会の地域医療情報システムの地域別統計にある.全国の二次医療圏ごとの人口を取得するには地道なコピペが必要である.
- 「都道府県」を「北海道」から「沖縄県」まで
- 「集計方法」を「二次医療圏別集計」とする
- 「集計項目A」を「将来推計人口(2045)」とする
- 「集計項目B」を「国勢調査人口(2020)」とする
- 「この条件で再集計する」ボタンをクリックする
再集計された結果は以下の図のようである.
上図はすでにデータを選択した状態であり,これをコピーしてExcelにペーストする.この作業を北海道から沖縄県まで繰り返す.
二次医療圏ごとの75歳以上人口の予測
集計項目を下図のように変更して再集計する.
- 「集計項目A」を「将来推計75歳以上人口(2045)」とする
- 「集計項目B」を「75歳以上人口(2020)」とする
- 「この条件で再集計する」ボタンをクリックする
再集計された結果は下図のようである.
上図はすでにデータを選択した状態であり,これをコピーしてExcelにペーストする.この作業を北海道から沖縄県まで繰り返す.
地域別指標から1を引いて100倍すると増減率となる
総人口にせよ,75歳以上人口にせよ,地域別指標は2045年予測値を2020年値で除しており,2020年値を1とした指数である.地域別指標から1を引いて100倍すると増減率となる.これらの計算はExcelのテーブルで行っておく.
二次医療圏コードでソート
地域医療情報システムでの抽出結果は二次医療圏コード順になっていない場合があるため,下記クエリでコードの昇順に二次医療圏コード,二次医療圏名を抽出し,Excel上で比較して手動で並べ替える.
SELECT [A38b_003] , [A38b_004] FROM [MedicalAreaDB].[dbo].[T_MedicalArea2_Dissolved] ORDER BY [A38b_003]
テキストファイルに出力
上記Excelのファイルをテキストで保存する.SQL Serverにインポートするためである.
SQL Serverでの処理
ウィザードを使ってインポート
ウィザードを使って上記ファイルをインポートする.
クエリ
下記クエリでは全人口の2020年から2045年までの増減率,75歳以上人口増減率,10万人あたりの医師数などを抽出している.CASE式では二次医療圏を大都市部,地方都市部,過疎地域に区分している.
USE [MedicalAreaDB] GO SELECT D.[A38b_003] AS '二次医療圏コード' , D.[A38b_004] AS '二次医療圏名' , [A38b_005] AS '医療計画面積' , [A38b_006] AS '国土地理院面積' , [A38b_007] AS '医療計画人口' , [A38b_008] AS '総人口' , [DoctorsNum] AS '医師数' , [A38b_008]/[A38b_006] AS '人口密度' , (CAST([DoctorsNum] AS float)/CAST([A38b_008] AS float))*100000 AS '人口10万人あたり医師数' , CASE WHEN [A38b_008]/[A38b_006] >= 1000 OR [A38b_008] >= 1000000 THEN '大都市部' ELSE CASE WHEN [A38b_008]/[A38b_006] >= 200 AND [A38b_008]/[A38b_006] < 1000 OR [A38b_008] > 300000 THEN '地方都市部' ELSE '過疎地域' END END AS '地域区分' , P.[ChangeRateOver75(%)] AS '75歳以上人口増減率' , P.TotalPopulationChangeRate AS '総人口増減率' FROM [dbo].[T_MedicalArea2_Dissolved] AS D INNER JOIN dbo.T_Population AS P ON D.A38b_003 = P.A38b_003 ORDER BY '地域区分'
得られた結果をExcelにコピペする.
Excelでのグラフ作成
1枚目は横軸に総人口増減率,縦軸に75歳以上人口増減率を取った散布図である.凡例は過疎地域,地方都市部,大都市部に分けてある.それぞれの定義は高橋のものに従った.高橋らの報告では凡例ごとに分布がきれいに分かれていたが,今回10年が経過したデータでは地方都市部と大都市部の区別が難しくなってきている.
2枚目は横軸に75歳以上人口増減率,縦軸に人口10万人あたりの医師数を取った散布図である.凡例は同様に過疎地域,地方都市部,大都市部に分けてある.高橋らの報告では人口10万人あたりの医師数が100人を下回る地域への医師派遣などの必要性を訴えていたが,今回のデータでは100人を下回る地域は殆ど見られない.医師の再配置が進んだのであろうか.日本医師会の医師数のデータが何年のものか不明であるため,正確なことは言えない.
まとめ
日本医師会の地域医療情報システムから2045年の医療需給を概観した.筆者は医療行政について言える立場にないが,医療は生活のインフラの一つであり,人口あたりの医師数はその目安ともなる.自分の住む地域が将来安心して医療を受けられる地域なのか,確認する手段としたい.