筋トレの分子生物学シリーズ第 1 弾.筋肉の発生についての記事である.教科書をまとめた文章であるため,文体がやや硬く専門用語も多いが,お付き合いいただきたい.
トレーニングの最適化:安全な筋力トレーニングにおける新しい進展
低強度と高強度との筋力トレーニングにおける筋力と筋肥大の適応,システマティックレビューとメタアナリシスにおいて参考文献の一つに挙げられていた論文を抄訳する.ロシアからの筋生検を含む貴重な報告である.このような侵襲的な検査は旧共産圏だから可能なのかも知れない.
トレーニング負荷の軽重の違いで肥大する筋繊維の型が異なる,という引用だけを抜粋するつもりだったのが,筋形成調節遺伝子にまで言及しており,ほぼ全訳となってしまった.二週間もかかってしまうのでは効率が悪すぎるのだが,ここは勉強と思って我慢しよう.
低強度と高強度との筋力トレーニングにおける筋力と筋肥大の適応,システマティックレビューとメタアナリシス
庵野拓将氏の 2018 年 6 月 21 日のブログ筋力増強と筋肥大の効果を最大にするトレーニング強度の最新エビデンスで公開された現時点でのエビデンス.
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ヒトにおいて筋トレの頻度,強度,ボリュームおよび様式は筋断面積にどう影響するか
今回の記事は庵野拓将さんのブログ記事,エビデンスにもとづく筋肥大を最大化するための筋トレ・ガイドラインで引用された総説を抄訳したものである.
この論文は総説であってメタアナリシスやシステマティックレビューではない点に注意が必要である.選択基準に従って何件の論文がスクリーニングされたか,除外基準に従って何件の論文が除外されたかの記述がない.この記事は抄訳であり,一部省略があることを記しておく.
The Influence of Frequency, Intensity, Volume and Mode of Strength Training on Whole Muscle Cross-Sectional Area in Humans Sports Med. 2007;37(3):225-64
一週間の筋力トレーニングボリュームと筋容積との用量応答反応:システマティックレビューとメタアナリシス
リハビリmemoにて庵野拓将さんがエビデンスにもとづく筋肥大を最大化するための筋トレ・ガイドラインで要約しているが,週あたりのセット数と筋肥大の間には用量応答反応がある.今回この論文要約の翻訳を試みた.
週あたりのセット数と筋力増強の関係を調べたメタアナリシス
週あたりのセット数と筋力増強の関係を調べたメタアナリシスについてはリハビリmemoで庵野拓将さんが簡潔に報告されているが,その論文の要約の翻訳を試みた.例によって Google 翻訳に頼り,おかしな訳は手動で訂正した.職場で筋トレに関して口演する機会があり,そのベースとなる論文の一部である.
減量の記録
2017 年 5 月,体重が過去最高記録を更新し BMI が 29 を超えた.さすがにヤバイと思い,減量を開始することにした.
実は一度,減量に失敗している.2016 年 10 月の検診でクレアチニンが若干高いと指摘され,たんぱく質の摂取量を減らしてしまったのだ.体重は 4 kg 近く減り,顔もスッキリしたがチェストプレスの重量が 20 kg も減ってしまった.これはまずいとやたら食べた結果,過去最高の体重になってしまったというわけだ.
基礎代謝量の算出

減量するにあたって最も重要なのは基礎代謝量の算出だ.この計算を間違えると摂取カロリーの管理ができない.基礎代謝量の測定には間接熱量計を用いるのが最も正確だが,そのような設備を持っている施設は限られる.こんなやつ.

そのためいくつかの推定式が用いられることが多い.
雪かきは筋トレと同等の運動負荷である
先日,記録的な大雪が降った.当地では一冬で 1-2 回の大雪は毎年のことなのだが,今シーズンは一ヶ月間で 3 回も降った.例年にないことなので,除雪に関するチップスを共有したいと思う.
道具
当家ではスコップとスノーダンプを主に使用しているが,実は雪が降ってから何日経っているかで使う道具を変える必要がある.前の晩から降った新雪なら密度が小さく軽いため樹脂やアルミ製で問題ない.しかし数日経過して圧雪になると密度が大きくなり,樹脂やアルミでは歯が立たなくなる.雪というよりほとんど氷だ.こういう時は鉄製に限る.
除雪の運動負荷は筋トレと同等
除雪は意外にも重労働だ.開始して数分で息切れしてくることもある.国立健康・栄養研究所の改訂版 『身体活動のメッツ(METs)表』によると,除雪作業の強度は 5.3-7.5 Mets 相当になる.平均して 6 Mets と覚えておくとよい.
これがどの程度かというと,実は筋トレと同等の負荷になる.下表は抜粋だ.雪かきというと何の生産性もない無駄な作業と思われがちだが,運動の観点からはトレーニーにとって魅力的な作業なのではないだろうか.作業に夢中になって,気がついたら 1 時間過ぎていたなんてこともザラだ.
| CODE | Mets | Major Heading | Specific Activities |
|---|---|---|---|
| 02050 | 6.0 | コンディショニング運動 | レジスタンストレーニング(ウェイトリフティング,フリーウェイト,マシーンの使用),パワーリフティング,ボディービルディング,きつい労力 |
| 02052 | 5.0 | コンディショニング運動 | レジスタンス(ウェイト)トレーニング:スクワット,ゆっくりあるいは瞬発的な努力で |
| 02054 | 3.5 | コンディショニング運動 | レジスタンス(ウェイト)トレーニング:複合的エクササイズ,様々な種類のレジスタンストレーニングを 8-15 回繰り返す |
| 08195 | 5.3 | 芝生や庭の手入れ | シャベルでの雪かき:人力で、ほどほどの労力 |
| 08200 | 6.0 | 芝生や庭の手入れ | シャベルでの雪かき:人力で |
| 08202 | 7.5 | 芝生や庭の手入れ | シャベルでの雪かき:人力で、きつい労力 |
服装
これだけの負荷で運動すれば当然発汗する.寒いと思って厚着して出たら,除雪の終わる頃には汗びっしょりというのもよく経験する.だから俺は除雪の時は厚着せず,むしろ薄着で出る.ただし,外套だけはしっかりしたものを着るべきだ.雪が降りしきる中での除雪という状況もありうる.降ってきた雪が体に付着して体を冷やすのは良くない.
実を言うと,しっかりした外套の下は肌着かパジャマだ.下半身は肌着の上にウィンドブレーカーパンツを履く.長靴の口をウィンドブレーカーパンツの裾で覆い,雪が入らないようにする.手袋はスキー用が良いだろう.フードを被る.
除雪の計画と実行
除雪というのはトンネルの掘削に似ている.扱う対象が雪か岩石かの違いはあるが,限られた空間内で必要な動線を確保し,優先順位をつけて掘り出したものを捨てる.その際には全体を見通す目が必要とされる.最大の課題は雪捨場の確保だ.
通路の確保
一面に積もった雪を見ると,気が滅入りそうになる.俺はその度にある場面を思い出して自分を奮いたたせる.NHK だったか,トンネル工事を描いたドラマだ.
トンネル工事は,実は水との闘いでもある.破砕帯と呼ばれる箇所が工事の難所とされ,大量の地下水が噴出する.この水を排水するために本坑に先立ってパイロットトンネルという先進坑を掘る.ドラマでは大量の湧水というピンチにあって主人公が選択を迫られた.
現場の作業員を救うには,すぐに撤退指示を出さなくてはならない.しかし作業員が撤退すればパイロットトンネルを失うことになる.それは工期の大幅な遅延を意味する.そこで主人公は驚くべき決断を下す.
「パイロットトンネルは,我々の目だ.水を本坑に流す」
作業員の命とパイロットトンネルの両方を救うにはこれしか方法がなかった.結果として工事は成功し,トンネルは完成する.
話が横道にそれた.除雪において最初にすべきは通路の確保である.通路は雪捨場のすぐ横に作る必要がある.車で通勤する人なら駐車場から道路まで車の幅に合わせて除雪する必要もある.俺の家の場合,道路と家の間に歩道があり,駐車場が歩道に面している.この場合,歩道を歩く人のための通路と,車を道路に出すための通路を作らなければいけない.
最初はスコップで玄関から掘り始める.人が通れるだけの幅であればよい.歩道に細い通路をまず一本通す.
次に歩道から道路への出口を掘り広げる.車が出られるだけの幅を掘る.ここを足がかりにして,雪捨場へのアクセス通路を掘る.
雪捨場の確保
自宅の敷地は狭い.雪を捨てられる場所は限られるため,必然的に上に積み上げざるを得ない.雪というのは日数が経つほど重く固くなり,対応が大変になる.初動が大事ということだ.
俺の家の場合,歩道と道路の間の縁石周辺が雪捨場になる.ここへのアクセス通路をまず掘る.重要な点は,アクセス通路は雪捨場のすぐ脇に掘るということだ.最初はスコップでスノーダンプが通れる幅を掘る.軽いからどんどん積み上げていく.この動作,何となくデッドリフトに似てないか?
歩道の端から端まで掘ったら,次はスノーダンプに持ち替える.
線で掘り,面に広げる
雪捨場の脇に掘ったアクセス通路の端から順にスノーダンプを突っ込んでいく.掘った雪はスノーダンプの向きを変えて雪捨場に押し付け,取っ手を持ち上げて体重をかけ,雪の壁を作る.
歩道上の雪はアクセス通路を挟んで雪捨場に平行移動することになる.降ったばかりの雪はふわふわしていて密度が小さいため,圧力をかけると体積が減る.アクセス通路が線でそれを広げていくイメージである.
車の周囲の雪も掘っておく必要がある.車の屋根に積もった雪は,運転前に必ず落とさなければならない.ブレーキを踏んだ途端,屋根から滑り落ちてきた雪でフロントガラスが全面覆われて視界がゼロになった経験があれば理解できるはずだ.
車の前面から道路に出るまでの通路も掘る.雪国では四駆が便利だ.普段は燃費が悪いため何度乗り換えようと思ったか知れないが,大雪の朝だけは四駆でよかったと思う.逆に軽自動車は雪道では無力だ.ほんのちょっとした段差も乗り越えられずスタックしてしまう.
ここまでの作業で 1-2 時間はすぐに過ぎる.大雪が予測されている日は早起きが必要だ.汗をかくから除雪後すぐにシャワーを浴びよう.プロテインも忘れずに.
Does strength promoting exercise confer unique health benefits? A pooled analysis of eleven population cohorts with all cause, cancer, and cardiovascular mortality endpoints.
英語の論文読んでたら止まらなくなって勢いで全訳してしまった.ほんとは全訳なんてしちゃいけないもんだと界隈では言われてたりするんだけど,この際まあいいや.
出典は筋トレが病気による死亡率を減少させる幸福な真実,大学病院理学療法士の方のブログ.いつもお世話になってます.幅広い論文検索能力,素晴らしいです.脱帽.
有料ってところでめげそうになる.PDF なんだけど,あまりレイアウトがきれいじゃない.どうも速報らしくて印刷用じゃないっぽい.
気になったのは考察で述べられている(本記事では強調表示してある)ところの,「若年成人では筋トレが動脈硬化を促進している可能性がある」というくだり.
アナボリックステロイドによるドーピングについては考察されているのかな?アメリカとかだと結構な割合でドーピングが浸透しているらしいし.若い男が手っ取り早くムキムキの体を手に入れたくてステロイドに手を出す,てのはいかにもありそうな話だ.参考文献までは読んでないので知らんけど,誰か読んだら教えて.俺もう疲れちゃったよ・・・
ところどころ翻訳が変な箇所があるけど,翻訳業者じゃないから勘弁してくれ.さて,行きますよ.
線形ピリオダイゼーション
Twitter でフォローしている山本義徳さんが新刊を出した.
最近ベンチプレスが停滞気味の自分にとって救世の書となるか.早速ポチった.
- 筋発達のメカニズム
- トレーニング頻度を考える
- 最適のセット数を考える
- レップスの科学と TUT
- 最適のインターバルは?
- プログラミングの実際
章ごとに目次から抜き出すとこうなる.最近の筋トレは週 3 日で行ってはいたが 1 回 2 時間もかかっており,正直時間の確保が難しくなってきていた.しかもマクロ栄養素に従って減量も同時に行っており,バーベルの重量は減らしたくない.ここで紹介されている線形ピリオダイゼーションが魅力的に思えた.

