ポアソン回帰モデルおよび負の二項分布モデルを用いて熱中症搬送人員数に対する日最高気温と平均水蒸気圧の回帰係数を推定する

 以前,熱中症搬送人員数は日最高気温と相関関係があり,片対数グラフで直線になると述べた.今回はポアソン回帰モデルおよび負の二項分布モデルで熱中症搬送人員数に対する日最高気温と平均水蒸気圧の回帰係数を推定する.

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RおよびR Studioをインストールする

 統計解析のため,SPSS version21.0をかつて使用していた.IBMによると,2018年に同バージョンのサポートは終了している.インストールはできるがアクチベーションができないため問い合わせたところ,上記のような次第であった.そのため,やむなくRを使用することにした.

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血圧制御における住宅の役割:日本のスマートウェルネス住宅調査からのエビデンスのレビュー

 日本におけるスマートウェルネス住宅調査のレビュー論文であり,介入試験の総括である.短期的には断熱改修により血圧が低下したことを示している.長期コホートについては今後データを収集する予定だそうであるが,エンドポイントに死亡を設定していないのが悔やまれる.英国の統計では死亡統計も検討しており,まさに全省庁を跨いだ介入プログラムの効果を検証する体制が整っている.日本も見習ってほしい.

 前回は屋内温度変化と血圧変動との相関関係を見た.今回は介入試験の結果を示しており,非無作為化比較試験であるためエビデンスレベルとしては低いものの,因果関係に迫る内容である.

 Role of housing in blood pressure control: a review of evidence from the Smart Wellness Housing survey in Japan Hypertens Res. 2023 Jan;46(1):9-18. doi: 10.1038/s41440-022-01060-6.から本文は読める.読みやすい英語であり,原文のまま挑戦しても問題ない.

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室内温度の不安定性が冬季の家庭血圧の日内変動および日間変動に与える影響:日本全国のスマートウェルネス住宅調査から

 スマートウェルネス住宅調査の結果から一つの論文を紹介する.前回の投稿では血圧値と屋内温度変化との関係を見たが,今回はベースライン調査から住宅の屋内温度と血圧変動との相関関係を見たものである.表題の論文はここから読める.

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冬季における家庭血圧と屋内温度との関連の横断解析 日本全国のスマートウェルネス住宅調査

 表題の原文はCross-Sectional Analysis of the Relationship Between Home Blood Pressure and Indoor Temperature in Winter: A Nationwide Smart Wellness Housing Survey in Japan DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.119.12914で読める.家が寒いと血圧が上がるという経験則をデータで示した論文である.血圧が上がれば心血管疾患リスクが上がり,死亡率も上がる.したがって冬には死者が増える,という冬季超過死亡率の上昇まで見てあればよいのだが,残念ながら死亡はエンドポイントとして見ていない.それがこの研究の限界である.

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世界保健機関の住宅と健康ガイドラインの死亡率に関する参考文献

 これまでの投稿においても参照されている世界保健機関の住宅と健康ガイドラインでは476もの文献が参照されている.この中から死亡率に言及した参考文献を抽出し,要訳とともに掲載する.なお,翻訳は機械翻訳によるものに手動で訂正を加えたものであり,日本語として難解な箇所もある.

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ヨーロッパにおける冬季超過死亡率:主要リスク因子を同定した国家間分析

 日本の住宅の断熱性はクソだ!では感情的な投稿を行ったが,本稿ではデータをもとに住宅の断熱性能の重要性を述べる.この論文の提起する問題は皆が思っていることであるが,データで示されたのは初めてだと思う.

 論文自体はここから読める.全訳したが,筆者の英語力の乏しさゆえ,やや読解しにくいところはご容赦いただきたい.

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寒い住宅と燃料貧困の健康への影響 Marmot Review Team

 寒冷な住宅の健康への影響は冬季超過死亡率の上昇など直接的な影響にとどまらない.本稿ではMarmot Review Teamが2011年に刊行した表題の報告書を全訳して報告する.最後の参考文献は可能な限りリンクを示したが,リンクミスなどがあればご指摘願いたい.

 冬季間に高齢者が多く死亡するのは当然と考えられてきた.しかしそれが貧弱な断熱性の住宅のためであり,政策によって適切な改修と燃料への補助を施せば冬季超過死亡を避けることができ,それによって医療費が削減できるとすれば,国全体としては投資した予算よりも多くの果実を得ることができる.英国からの報告は野心的である.

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