あたしがどれだけ大変か,分かった?

 ある土曜日の夕方,妻が「明日は休日が欲しい」と言い出した.

 来たか,と思った.この言葉が出てくる時には妻のメンタルに不調が見られることが多い.放っておくと家族を置いて出て行ってしまいかねないので,覚悟を決めて一日の食事は自分が作ることにした.

朝食を作る

 平日の朝食は自分が作っている.ご飯,味噌汁,生野菜サラダ,納豆.これくらいなら 30 分もあればできる.だがこの朝の主食は食パンだった.生野菜サラダはともかく,味噌汁は合わない.ちょっと考えて,たまねぎと人参のポタージュを作ることにした.飼っている犬が吠えだしたので,妻が散歩に連れて行く.

 料理は段取りが重要だ.時間配分を考えないとあっという間に時間が過ぎてしまう.朝食の場合,ポタージュの材料を先に切るべきだったが,何も考えずにサラダから切り始めてしまったため,朝食開始時刻が遅れた.子どもたちには卵サンドイッチ.食後のデザートに自家製ヨーグルトとコーヒー.

 食後は洗濯.自分は香辛料の棚卸しをする.期限切れのスパイスを捨てる.その間に 10 時を回ったので自分は鯖缶を食べる.空き缶をスパイスと同じゴミ袋に入れたら臭うからやめろと怒られた.鯖缶は確かに臭うため,後処理に気を使う.

昼食を作る

 昼食は何を作ろうか.時々妻がいない休日には焼きうどんを作る事が多かった.昼は焼きうどん,夜はカレーと言ったら,長男がカレーうどんがいいと言い出した.おい,夕食に作るものがなくなるじゃないか.とは言え子供の希望にはかなり強制力があって逆らうことができない.何しろ,嫌いなものは絶対に食べないのだから.

 夕食は何を作ろうか.栄養のバランスを考えると思考がフリーズしてしまう.冷蔵庫の中にあるものを組み合わせてたんぱく質,炭水化物,野菜に不足が出ないようにメニューを組み立てるのには実はかなり高度な思考を要する.

 冷凍庫には何がある?タレで漬け込んだ豚肉.ササミの切り身.この二つが使えそうだ.我が家ではカレーにはササミと決まっている.OK, 昼のたんぱく質はササミだ.重さを量る.一人あたりのたんぱく質は 18 g くらいか.豚肉は夕方までに解凍すればいいので冷蔵庫に移す.ササミはすぐにでも使いたいので冷凍庫から取り出し,常温でフライパンの上に置く.冷凍食品は調理する時刻から逆算して解凍手段を選ぶのがキモだ.

 カレーの野菜にはじゃがいも,人参,たまねぎ,かぼちゃ.たまねぎを切り,鍋にオリーブオイルをスプレーして投入.まな板に戻って人参とじゃがいもを切る.皮むきはピーラーを使う.慣れた人なら包丁のほうが使いやすいかも知れない.切った野菜は一旦ボウルに移す.

 かぼちゃを切ってルクエで加熱.その間にササミを切る.サイズはサイコロ大.まだ半分ほど未解凍だが気にしない.切ったササミを鍋に投入.包丁とまな板は食洗機へ.ササミの表面が焼けたらボウルの野菜を投入.ある程度焦げ目がついてきたら水を 2 カップほど加え,20 分ほど煮込む.かぼちゃの加熱が終わったらそのまま鍋に入れ,お玉で潰す.かぼちゃは片栗粉の代わりでとろみを付けるために使う.ルーを人数分入れ,かき混ぜて完成.

 カレールーをそのまま茹でたうどんにかけるつもりだったが,かぼちゃのためにかなりモチッとしたとろみがついている.これはうどんのスープが別に要るな.

 電気ケトルでお湯を沸かす.沸いたら鍋に移し,加熱.沸騰したらうどんを投入.一旦冷めるので再沸騰を待つ.タイマーで 2 分.ザルにうどんを空ける.再度電気ケトルでお湯を沸かす.沸いたら鍋に移し,粉末スープを投入してかき混ぜる.器にうどんとスープを盛り,カレーをかけて完成.

おやつを作る

 昼食後はクッキーを作りたいと長男が言い出した.休む間もない.ホットケーキミックス 100 g, 卵,オリーブオイル 20 g が材料だが,プロテインパウダーを混ぜてみることにした.割合は 7:3. 自分が普段飲んでいるカゼインを使う.

 長男が混ぜたいと言うので泡立て器で混ぜさせる.かなり適当だ.ここは妻にも手伝ってもらう.手袋をはめてこねる.粘土細工みたいだ.生地を半分に分けて片方にはココアパウダーを混ぜる.麺棒で薄く延ばし,型抜きをする.ここら辺の形作りにはオリジナリティが出る.

 オーブンを 170 °C に予熱し,7 分間焼いて完成.ちょうど 3 時.コーヒーを淹れておやつの時間とする.

夕食を作る

 おやつを食べたら,もう夕食の準備にかからないといけない.座れる時間は食べている間だけ.妻は毎日こんなことしてるのか・・・

 おやつを作っている間に妻が買い物をしてきており,牛肩ロース肉の下処理をしてくれていた.生肉を扱ったまな板や包丁を高温で洗浄するため,食洗機の洗浄モードは 90 °C になっていて,普段よりも時間がかかる.中の鍋や包丁が使えないと準備ができない.下ごしらえもまた,調理の時刻から逆算して行わないといけないのだ.

 そうは言っても出来ることはある.冷凍庫にブロッコリーとほうれん草がある.エビはさっき買ってきてもらった.じゃがいもとたまねぎもある.

 冷蔵庫で解凍した豚肉を取り出す.フライパンを熱して数枚載せる.テフロンが剥げたフライパンはあっという間に焦げ付いてしまった.慌てて水を入れるが,時既に遅し.肉を取り出して皿に載せる.キッチンペーパーでフライパンを拭き取る.

 次からは慎重になる.オリーブオイルをスプレーして肉を載せ,ある程度焼けたら水を入れて蓋を置く.蒸し煮焼きだ.焼けた肉を取り出してフライパンの汚れを拭き取り,オリーブオイルをスプレーして次の肉を載せる,の繰り返し.当然,生肉を扱う箸と焼けた肉を扱う箸は分ける.

 肉が焼けたら次は野菜だ.ブロッコリーを茹でる.エビも茹でる.両者をボウルに入れて酢とマヨネーズを垂らし,スプーンで混ぜる.本当は食べる直前に和えないとブロッコリーが黄色に変色するのだが,この際しょうがない.ラップを掛けて冷蔵庫で冷やす.これで一品.

 圧力鍋を取り出す.使いかけの冷凍のほうれん草,じゃがいも1個,たまねぎ1個,牛乳,水,コンソメ,みりん.作り方はこちらを参照のこと.これでもう一品.

 野菜はこれで良いかと思われたが,妻からもやしの炒め物も作ってくれとリクエストが来た.フライパンにオリーブオイルをスプレーして 400 g を放り込み,蓋をして放置.他の作業をしていたら気が付かないうちに焦がしてしまった.これでさらに一品.

 ご飯は冷凍してある残りを使うことにした.電子レンジで加熱する.合間を見て妻が犬を散歩に連れて行く.

 なんだかんだで作り終わったのが午後 5 時頃.おやつのクッキーを作る合間に妻がローストビーフを作ってくれていたので,たんぱく質は豚の焼肉とローストビーフの二種類になった.かなり豪華だ.

入浴・夕食

 我が家では夕食前に入浴をすることになっている.いつもなら俺が子どもたちと風呂に入るのだが,今日は妻が入る.最後に俺が入浴し,浴室を洗って風呂を出る.午後 7 時になっていた.

 夕食の時にお疲れ様でした,と言われた.子どもたちも美味しかった,と言ってくれた.何だか嬉しかった.しかし妻は「あたしがどれだけ大変か,分かった?」と釘を差すのも忘れなかった.ぐうの音も出なかった.

まとめ

 確かに,毎日これだけのことをこなすのは大変だ.まず,主要な栄養素を何で摂るかを考えなくてはいけない.制約条件はストックしてある食材だ.時間があれば買い物に出られるが,様々な理由で出られないこともあり,冷凍庫や冷蔵庫の下の方までひっくり返さないといけなくなる.

 小さな子供がいる場合,その日の気分で食べたいものが変わるため,大人とは別のメニューを作らないといけないことが多い.実際,長男は朝は卵サンドイッチ,夕は餃子を食べたいと言い出した.卵サンドイッチは前日に分かっていたため食パンを用意できたのだが,夕食は直前にならないと分からない.これが妻の行動計画を引っ掻き回す.

 子供の食べたいものがストックされていない場合は,なだめすかして他の食材に誘導する技術が必要になる.子供がオーブンなどの加熱調理器具の近くでちょろちょろ遊んでいたら危ないので追い払わないといけない.機嫌を損ねて泣き出したらあやさないといけない・・・

 何を作るか決まったとして,調理のタイムスケジュールにも頭を使う.調理には,材料を切るなどとにかく手を動かさないといけない時間と,加熱などで発生する空き時間がある.この空き時間に手を動かす次のタスクを詰め込む,というスケジュール管理が必要だ.結果として複数の調理過程がずれて並行して進行することになる.この場合の制約条件はまな板や包丁,鍋やフライパンの数,そしてコンロの口数だ.

 特に生肉を扱った後の調理器具は一旦洗浄しないといけないから,次の作業に使えない.食洗機を使っている場合,1-2 時間は取られるからその分も見込んで作業計画を立てる必要がある.要するに,調理にはものすごく頭を使うのだ.

 しかし,妻の仕事はこれだけではない.子供が帰ってきたら塾の送迎や入浴がある.小さな子供は自分で食べないから食べさせないといけない.ともかく,自分ではコントロールできない外的要因ばかりなのだ.子供が生まれると妻には高度なタスク管理能力が求められるようになるのには,こんな背景がある.

 こんな状態のところに帰ってきた夫がゴロゴロしていたらどんな気分になるか,ちょっと想像したら分かりそうなものだが,残念ながら実際こうして丸一日調理をするまで俺には分からなかった.今までごめんよ・・・

 ともかく,一度こうした経験をしておくと妻の置かれた状況というものがよく分かるようになる.たまの休日にはゴロゴロしていたい気持ちも分かるが,たまには相手の立場を理解するためにも丸一日,妻の仕事をやってみることをお勧めしたい.

2 Replies to “あたしがどれだけ大変か,分かった?”

  1. はじめまして

    とても、とても面白いサイトです
    唐揚げを作るときの重量変化が知りたくて、飛んできました

    こちらの1日お母さんの記事も面白かったです
    わたしも主婦でお弁当も含め三食作っていますが、
    これほどおかずは多くありません
    まして、手作りおやつなんて。。。

    これからも記事を楽しみにしています

    1. はじめまして
      コメントありがとうございます.
      当ブログでは栄養と運動について発信しております.
      今後共よろしくお願いいたします.

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