小学校の夏休みの宿題,ポスターを攻略する

 自分が小学校の夏休みに何を提出したか,自由研究か何かあったはずだが覚えていない.国語,算数,理科,社会のテキスト問題は学校でもらうなりすぐに解いてしまったのを覚えている.上の子供は誰に言われた訳でもなく,夏休みの宿題はさっさと済ませてしまう.

 親の立場になり,子供が小学校に上がったのをきっかけに毎年の夏休みが楽しくなった.きっかけは子供が 2 年生のときに描いたポスターが偶然にも県の審査にまで行ったことだった.

 正直なところ,あまりポスターには最初興味がなかった.しかし,県のポスター展示を見て考えが変わった.これは,挑戦しがいのあるテーマだ.

 県レベルになると展示されるポスターのレベルが格段に上がり,大人をもうならせる程の作品と呼べるものが出てくる.

未来の科学の夢絵画展

 正式にはこの名称である.公益社団法人発明協会というところが主催しているが,後援には文部科学省と経済産業省がついている.つまり,国の事業なのである.

 上記サイトには次のように簡潔に書かれている.

あなたは,どのような未来を想像しますか?どんな科学が,技術が,発明が生まれているでしょうか?あなたは,どのように未来を創造しますか?未来の科学の夢を,あなたの自由な発想で描いてみてください.

 ここにどのようなテーマでポスターを描けばよいのか明文化されてはいない.しかし,受賞作品を見ていくうちに,いくつかの主要な柱とも言えるテーマが浮かび上がってくる.

まず,科学技術の発展が土台にある

 当たり前だが,科学技術がその土台にないものの評価は高くない.たとえば,県知事賞を取った作品が,国の審査では箸にも棒にもかからない扱いだったこともある.それは重力を無視した設定だったからだ.重力に逆らうには何らかのエネルギーを投入しなければならないが,そのエネルギーの入力を描いていなかった.

 物理学の法則を踏まえたものであること.いわゆる「魔法」の類は通用しないと思ってほしい.

大きなテーマは人体,環境,情報だ

人体には医療,健康,脳科学が含まれる

 第40回 受賞者一覧を見ていくと,最初の医療系としては『蚊が人類を救う』がある.他にも『着るだけ簡単!! 健康診断パジャマ』『手,足が不自由な人でも幸せな,いす』『AIがみんなの健康を守ります』『ドローン移動病院』『ガン治療マイクロロボット』などが目につく.『脳内視覚めがねと危険感知つえ』『ツナガリマクリマクラ』『ろくがめがね』『こん虫の名前がわかる虫メガネ』『点字手袋』『盲導ロボット』『世界中の本が読めるアイマスク』は脳科学の発展により実現可能と思われる技術であり,すでに一部実現している.

 遺伝子 (gene), ナノマシン (nano machine), ロボティクス (robotics), つまり GNR の発展により恩恵を受ける領域がここである.

環境には地球温暖化,防災,エネルギー問題が含まれる

 いずれも人体の外の話である.温室効果ガスによる地球温暖化をどうやって食い止めるのか.とりわけ日本においては地震や津波,洪水などの自然災害をどうやって減災していくか.また原子力発電に頼るわけには行かなくなった日本で,どうやって資源の不足からくるエネルギーの不足を解決していくのか.

 『地しん力発電』『くじら雲』『お母さんがおこるとたまる充電池』『危険豪雨と災害を生活エネルギーに変える』『太陽みたいな歌声エネルギー』『そらがとべるじどううんてんくるま』『うかぶシルバーカー』『お天気傘』『ゴミと赤しおからまもるんやさ』『永久とう土を守るソーラーれいきゃくそうち』『大雨を止めろ!!』など,そのものズバリのタイトルばかりである.

 一部では批判もあるものの,地球温暖化への対処,地震や洪水などの災害への対処,石油からの脱却および原子力に頼れないという制約下でのエネルギー確保あたりがテーマとなる.

情報には IT 技術の進歩が欠かせない

 コンピュターの発達に伴い人工知能の台頭が目立ってきた.人工知能をいかに活用していくかが今後の課題である.いきなり汎用人工知能までは行かなくても,ネットを活用した情報の流れを良くするという意味でもよい.

 『世界中の本が読めるアイマスク』『くじら雲』『盲導ロボット』『点字手袋』『こん虫の名前がわかる虫メガネ』『お天気傘』『ろくがめがね』『着るだけ簡単!! 健康診断パジャマ』『AIがみんなの健康を守ります』『脳内視覚めがねと危険感知つえ』『きけんを察知!お助けメガネ』などがある.

 すでに一部は VR コンテンツとして実現している.

優れた作品は三大テーマのオーバーラップする領域にある

 上位に入賞している作品には特徴がある.上で述べた三つのテーマのうち,一つだけで勝負をかけてきている作品は少ない.何か,二つの領域に重なるテーマを掲げている.たとえば『クジラ雲』は大気中の有害物質を除去する人工知能であり,環境と情報に重なる領域である.『着るだけ簡単!! 健康診断パジャマ』は人体と情報に重なる領域である.

人体,環境,情報の領域にまたがる分野に勝機がある

 他にも,ニトロゲナーゼの反応機序を詳細に解析するために必要な量子ビットが 1 億量子ビットとされており,楽観的な実現時期が 2030 年と予想されていることなど,ハーバー・ボッシュ法に代わる窒素固定法は全世界で消費するエネルギーの数 % を節約可能とする可能性があるが,これは大規模コンピューティングが実現して初めて解決可能となる課題であり,情報と環境の重なる領域である.

 このように,異なる領域の技術を組み合わせて問題解決を図るのが入賞の秘訣である.

画力はあったほうが良い

 絵は上手なほうが良い.俺の子供は絵がそれほど上手ではなく,親が色塗りを手伝っているが,ここは暗黙の了解だ.本人に素晴らしく絵の才能があるなら最初から最後まで描かせてやるのが筋というものだろう.

 全国になると絵のレベルも格段に上がり,美術大学の学生が描いたのではないかと思われるほど高レベルの作品も出品されている.

だが,最後にものをいうのはアイデアだ

 現代の世界で問題になっているテーマは何か.それを解決するにはどんな技術が必要なのか.そこを見抜く観察眼が必要だ.

 同時に,現代の科学の最前線で何が起きているのかを知っている必要がある.具体的には,その年のノーベル医学生理学賞や物理学賞,化学賞などに注目する.そして,今はまだ実用段階にないとしても,近い将来実現できそうだと思える技術を見せること.これに尽きる.

 課題を発見し,現状を見据え,このような技術で解決する,という道筋を一枚のポスターで見せることができれば入賞は堅いだろう.入賞作品は国立科学博物館に展示される.大変な名誉である.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください