地球温暖化が叫ばれている.様々な意見はあるだろうが,脱炭素の流れは変わりそうにない.総務省の eStat をもとに,日本の電力,水資源などの収支を概略する.
水資源
水は古くて新しい問題である.歴史上,為政者の悩みの一つは毎年の洪水であり,治水対策が国力を左右する重要な政策であったことは間違いない.
現代においても水は生活にとってもっとも重要なインフラであることに変わりはない.上水道の普及は清潔な飲料水の確保にとって最重要課題であり,途上国においては未だに上水道の普及していない地域が多く,感染症の制御にとって重要な鍵となっている.下水道もまた都市の衛生上,重要なインフラである.災害などによって下水があふれると,感染症の流行に繋がりやすくなることは先進国でも途上国でも同様である.
日本の総人口と上水道給水人口の散布図を示す.1976 年から 2020 年までのプロットである.日本経済の発展に伴い,上水道給水人口はほぼ全人口に近いところまで達しているのが分かる.今後は人口減少に伴い,右上に向かってプロットしていったマーカーは左下に向かって下降していくことになるだろう.
日本の総人口と下水道によるトイレ水洗化人口の散布図を示す.下水道の普及は上水道よりも遅れる.後に示すが,2019 年においても日本の人口の約 20 % は水洗トイレの恩恵に与っていない.
電力
生活が便利になるとは,電力消費量が増えるということでもある.単純に家電の種類が増えるだけではなく,生活に占める電力の割合が増えている可能性がある.下図に示すのは 1975 年から 2015 年までの総人口と電灯使用電力量の散布図である.人口増加だけでは説明のつかない電力消費量の増加が見て取れる.2008年をピークに人口減少に向かってもなお,人口と使用電力量とは同じ曲線に載っているようには見えず,生活水準が向上していることを示している.しかし,電力消費量そのものは人口に相関して今後は減少していくものと予測される.
化石燃料
家庭における熱源としては旧来は灯油,プロパンガスであった.都市においては都市ガス,最近では熱源にも電化の傾向が見られる.ここでは都市ガス販売量の推移を人口とともに見てみる.
人口減少局面においてさえ,都市ガス販売量は増加している.これは灯油からガスへの置き換えが進んでいること,大都市への人口の流入など複合的な要素が関係していると考えられ,単純に一人あたりの消費量が増加しているとは言えないかもしれない.
保有自動車数に対するガソリン販売量も見てみる.2005 年をピークとしてそれ以降ガソリン販売量は減少傾向にある.自動車の燃費は環境負荷を制約として年を経るごとに改善しており,その現れかも知れないが,このグラフは「きれい過ぎる」.おそらく他に原因があるだろう.
最終エネルギー消費量
最終エネルギー消費量の全国レベルの統計はない.都道府県単位の統計ならある.ここは単純に総計を取ることで全国の最終エネルギー消費量としてみよう.
2007年から2018年までである.2008年から2009年にかけて一時的な落ち込みはあるものの,人口減少を反映して減少傾向にある.一人当たり最終エネルギー消費量の計算は少し面倒である.
温室効果ガス算定排出量
温室効果ガスは二酸化炭素を中心とし,地球温暖化の原因とされている.2009年から2017年までの総人口に対する温室効果ガス算定排出量を示す.日本の人口は2008年をピークに減少傾向にあるが,このグラフからは温室効果ガスの排出量は逆に増加していることが分かる.一人あたりの生活水準の向上によるものか,他に原因があるのかは分からない.はっきりしているのは,全世界の二酸化炭素の年間排出量500億トンのうち,約1%を日本が排出しているということである.
一日一人あたりのごみ排出量
一日一人あたりのごみ排出量を示す.単調減少しているが,近年はほぼ平坦化してきている.
し尿処理量
単純化するとバキュームカーによる下水の回収量のことである.人口減少により処理量が減少しているのではなく,次に示すように水洗トイレの普及によるところが大きい.
まとめ
主に人口を変数として上水道給水人口,下水道によるトイレ水洗化人口,電灯使用電力量,都市ガス販売量,ガソリン販売量,最終エネルギー消費量,温室効果ガス算定排出量,一日一人あたりのごみ排出量,し尿処理量を概略した.温室効果ガス算定排出量が増加しているのが懸念される.
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