化石燃料が悪者扱いされているが,日本においては原子力発電所の稼働停止により火力発電所の稼働は止むを得ない.eStatから日本の資源収支を概略するでは化石燃料の代表として都市ガス販売量とガソリン販売量を挙げたが,今回は1980年以降の石油需給について,経済産業省の石油統計を調べてみた.
液化天然ガス
液化天然ガスの7割は火力発電所で消費され,残りが家庭用の都市ガスとして供給される.多少の変動はあるが,1980年以降,液化天然ガスの需要は一貫して増加傾向にあったが,近年は減少に転じている.都市ガス供給区域を地図化したデータベースがあれば良いのだが,現状は各ガス会社の公開している地図に頼らざるをえない(例:東京ガス).
電灯使用電力量との関連を見ると,きれいに相関しているのがわかる.相関係数は0.92である.
都市ガス販売量との相関係数も0.87と高い.
液化石油ガス
液化石油ガスは家庭用のプロパンガスの他,都市ガスの原料,LPG自動車の燃料,工業用,火力発電所の燃料などとして消費される.灯油同様,需要は減少しつつある.客が減っているのだから,供給側としては値上げせざるをえない.プロパンガス料金に関連するトラブルを聞くのも無理はない気がする.
需要の減少する原因はなんだろうか.個人的には人口の社会的移動,つまり都市への移動により結果としてプロパンガス供給区域から人口が流出しているためではないかと考えているが,市区町村別の詳細な消費データがなく,証明は難しい.
なお,資源エネルギー庁には1990年以降の都道府県別エネルギー消費統計があり,市町村別エネルギー消費統計作成のためのガイドラインという文書もある.また,国際環境経済研究所では地域エネルギー需給データベースの公開を予定している.
灯油
灯油は家庭における熱源として消費されるほか,燃料電池や自家発電の燃料として,また洗浄や溶剤など工業用・産業用にも用いられる.液化石油ガス同様,需要は減少しつつあるが,プロパンガスと違って消費者への提供はガソリンスタンドの他ホームセンターなど幅広い流通経路があり,消費者トラブルはあまり聞かない.
原油
最後に原油輸入量の推移を示す.20世紀末をピークとして原油輸入量は減少傾向にある.国内でも原油は生産されているが,輸入量と比較するとそれほど多くはないため割愛する.
「ピークオイル」という言葉がある.石油の供給がいつ頭打ちになるかという意味だが,実際には1980年代以降は40年程度の可採年数を維持しており,石油の需要がいつピークを迎えるかという意味が強まっている.日本は高齢化によりすでにピークを過ぎたと言えるだろう.世界全体では2030年代半ばではないかと言われている.
まとめ
経済産業省の石油統計から代表的な化石燃料の輸入量,消費量をグラフ化した.液化天然ガス以外は総じて減少傾向にある.脱炭素という視点からは,化石燃料の消費が減少していくのは好ましい傾向である.ジェット燃料や重油・軽油など他の化石燃料については別の機会としたい.
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