冬季における家庭血圧と屋内温度との関連の横断解析 日本全国のスマートウェルネス住宅調査

 表題の原文はCross-Sectional Analysis of the Relationship Between Home Blood Pressure and Indoor Temperature in Winter: A Nationwide Smart Wellness Housing Survey in Japan DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.119.12914で読める.家が寒いと血圧が上がるという経験則をデータで示した論文である.血圧が上がれば心血管疾患リスクが上がり,死亡率も上がる.したがって冬には死者が増える,という冬季超過死亡率の上昇まで見てあればよいのだが,残念ながら死亡はエンドポイントとして見ていない.それがこの研究の限界である.

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都市の戦略的縮小

2042年での未来シナリオのシミュレーション結果

 数十年後に日本はどんな姿に変わっているのか.『データで見る都市の衰退』というテーマのもと,様々な角度から考察してきた.

 残念ながら,あまり楽観はできない.どちらかと言うと,悲観的な予測が優位である.ほとんどの都市は衰退していく.東京も例外ではない.

 今回は参考図書を読んで日本の住宅事情およびその背景にある核心的問題について考察を述べる.これは誰も触れようとしない聖域である.

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筋肉,運動および肥満:分泌臓器としての筋肉

 NHK スペシャル「人体」シリーズ第 2 集「驚きのパワー!“脂肪と筋肉”が命を守る」で紹介されていた論文である.筋肉もまた様々なメッセージ物質を出して体内の臓器と対話している分泌臓器である,という視座を提供した点でこの論文の功績は大きい.2018 年 7 月時点での被引用回数は 1000 を超える.

 筋トレはもはやボディビルダーやトレーニーの専売特許ではない.単に肉体を改造するだけでなく,代謝疾患や癌など人間を苦しめる病気を予防する優れた手段であることが,最新の科学研究によって分かってきた.運動が人の生命予後を改善することは疫学的には分かっていたのだが,その分子生物学的な機序がようやく明らかになってきた.今回はこの論文の全訳を紹介する.

 この論文の著者はコペンハーゲン大学の Bente Klarlund Pedersen 博士だが,論文引用の順番がきちんと文章通りになっていて非常に読みやすい.普通の論文だと引用の順番がぐちゃぐちゃで大変読みにくいのだが,きちんとした人なんだろうなと思わされる.いや,どうでもいいんだけどね.

https://www.nhk.or.jp/kenko/special/jintai/sp_4.html

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スマートキッチン

シアトル

 2020 年 9 月某日,シアトルにある Amazon 本社では静かな期待と興奮が満ちていた.東京オリンピックが終わり,ピークを迎えた日本の株価は徐々に下がりつつつある中,何か重大な発表があるのではないかとの噂で持ちきりだった.

 壇上には Amazon の CEO, ジェフ・ベゾスの姿があった.彼は過去 1 年間の業績を報告した後,新製品について言及した.

「数年に一度,すべてを変えてしまう製品が登場します.それを成し遂げることができれば幸運ですが,我々は何度かの機会に恵まれました」

「2007 年,Kindle を発表,紙の書籍から電子書籍へと移行」

「2011 年,Cloud Player を発表,これは iPhone ほどのインパクトはなかったかも知れない」

 会場に笑いが起きる.

「2014 年,Alexa を発表.タッチ画面から音声へとインターフェースの移行が始まりました」

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Does strength promoting exercise confer unique health benefits? A pooled analysis of eleven population cohorts with all cause, cancer, and cardiovascular mortality endpoints.

 英語の論文読んでたら止まらなくなって勢いで全訳してしまった.ほんとは全訳なんてしちゃいけないもんだと界隈では言われてたりするんだけど,この際まあいいや.

 出典は筋トレが病気による死亡率を減少させる幸福な真実,大学病院理学療法士の方のブログ.いつもお世話になってます.幅広い論文検索能力,素晴らしいです.脱帽.

 原文はこちらね.Does strength promoting exercise confer unique health benefits? A pooled analysis of eleven population cohorts with all-cause, cancer, and cardiovascular mortality endpoints

 有料ってところでめげそうになる.PDF なんだけど,あまりレイアウトがきれいじゃない.どうも速報らしくて印刷用じゃないっぽい.

 気になったのは考察で述べられている(本記事では強調表示してある)ところの,「若年成人では筋トレが動脈硬化を促進している可能性がある」というくだり.

 アナボリックステロイドによるドーピングについては考察されているのかな?アメリカとかだと結構な割合でドーピングが浸透しているらしいし.若い男が手っ取り早くムキムキの体を手に入れたくてステロイドに手を出す,てのはいかにもありそうな話だ.参考文献までは読んでないので知らんけど,誰か読んだら教えて.俺もう疲れちゃったよ・・・

 ところどころ翻訳が変な箇所があるけど,翻訳業者じゃないから勘弁してくれ.さて,行きますよ.

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