筋トレの分子生物学(2)筋細胞の構造

 筋トレの分子生物学シリーズ第 2 弾.光学顕微鏡から電子顕微鏡に至るまで次第に倍率を上げながら筋肉の構造を見ていく.

https://www.nhk.or.jp/kenko/jintai/parts/muscle

骨格筋細胞

 骨格筋細胞は随意運動を担い,長さは数 cm, 太さは 0.05 mm ほどで筋線維とも呼ばれる.骨格筋線維の数はヒトでは出生前に決まるが,個々の線維細胞内の核の数は増減する.アスリートの筋肉の太さの増大には筋芽細胞の補充と筋原線維の大きさや数の増大が関わっている.

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筋線維の構造

 筋線維の細胞質の大半は筋原線維で占められている.筋原線維の直径は 1-2 µm で長さは筋線維とほぼ同じである.筋原線維は筋節(サルコメア)と呼ばれる収縮単位の反復構造からなり,その長さは 2.2 µm である.筋原線維を電子顕微鏡で観察すると,規則的な縞模様が見える.明帯暗帯はそれぞれアクチンミオシンに相当する.明帯の中央には Z 盤があり,Z 帯と Z 帯との間がサルコメアである.

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サルコメアの構造

 サルコメアは細いアクチンフィラメントと太いミオシンフィラメントが重なって規則的に配列している構造である.アクチンフィラメントは Z 帯に付着しており,図には示していないが,ミオシンフィラメントの両端はタイチンというタンパク質を介して Z 帯に結合しており,タイチンはばねのように伸縮する.タイチンによってミオシンフィラメントはサルコメアの中央に固定されている.

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 タイチンはネガティブ動作,つまり伸張性収縮に関わる分子と考えられている.アクチン-ミオシン重複領域がゼロに近づき,活性アクチン-ミオシンの力産生がゼロに近くなっても,タイチンは伸長し,この長さで受動的な力を提供する.タイチンは分子ばねとして作用すると考えられている.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20357181

ミオシンフィラメントの構造

 ミオシンフィラメントは II 型ミオシン分子が 100 個以上集合してできている.II 型ミオシンは頭部を両端に向けて自己集合する性質があり,ミオシンフィラメントの集合した尾部の太い構造からミオシン頭部がフィラメントの外周に顔を出している.

II 型ミオシンの構造

 II 型ミオシンは 2 個の頭部と 1 本の長い尾部からなる双頭の蛇のような構造をしている.II 型ミオシン頭部にはそれぞれ ATP 結合部位があり,ミオシン頭部の先端にはアクチン結合部位がある.ミオシン頭部には ATP の加水分解エネルギーを頭部の機械的運動に変換するアクチュエーターとしての働きがある.

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電子顕微鏡で見るサルコメアの断面

 サルコメアの断面を電子顕微鏡で観察すると,ミオシンフィラメントが六角格子状に配列し,その間にアクチンフィラメントが等間隔で配列している.ミオシンフィラメントの断面は大きな点として見え,アクチンフィラメントの断面は小さな点として見える.その数の比は 1:2 となっている.

その他の構造物

 筋線維の細胞質には筋原線維の他に筋小胞体ミトコンドリアがある.また筋線維に特徴的な構造として T 管がある.筋小胞体は網目状に変形した小胞体で,筋原線維を網タイツのように包み込んでいる.筋小胞体の内部にはカルシウムイオン (Ca2+) が蓄えられている.ミトコンドリアはエネルギー産生の中心となる細胞内小器官である.電子顕微鏡で観察すると,ミトコンドリアは筋原線維に隣接して配置している.T 管は筋細胞膜が内側に貫入してできたもので筋原線維を取り囲み,筋小胞体に隣接している.T 管は筋小胞体に活動電位を伝える働きをしている.筋小胞体には Ca2+ が貯蔵されており,活動電位が到達すると Ca2+ を放出する.これが筋収縮の直接のトリガーになる.

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