Interstellar

 Interstellar を観た.一言で言うと,『上質のSF』である.

 滅亡に瀕した地球を救うため,土星軌道に出現したワームホールを抜けて外銀河に旅立つ宇宙飛行士の物語,と書いてしまえばつまらない.先に旅立った 12 名の宇宙飛行士のうち,生存可能性のあるのは 3 名.その 3 名のうち,誰を最初に救出するか.時間と,物資は有限である.クルーの協議にも葛藤がにじみ出ている.

 最初に着陸した星でクルーの 1 名を失う.地球時間での 23 年を費やし,軌道に戻った彼らは次の星に向かう.星間通信の場面で成長した娘の姿に主人公が咽び泣くシーンは印象的だ.

 2 番目の星で冷凍カプセルから蘇生した科学者の裏切りにも強い説得力があり,極限状況に置かれた人がどんな行動に出るか,あらかじめ想定しておかなくてはならないと感じた.2 番目の星でまた 1 名のクルーを失う.裏切った科学者もまた宇宙の藻屑と消える.

 2 番目の星を辛くも脱出したものの,宇宙船はブラックホールに飲み込まれようとしている.スイングバイ航法によりアメリアの乗る着陸船のみをブラックホールから逃し,主人公は母船ごとブラックホールに飲み込まれる.しかし,そこで彼は特異な経験をする.

 映画の中では四次元立方体と表記されていた.時間もまた物理量の一つとして扱えるレベルにまで達した『彼ら』により作り出された高次元空間内に,彼はいた.娘のマーフィの部屋に,時間を自由に行き来できる状態で接続されていたのである.マーフィは幽霊と言っていたが,高次元空間から干渉しようとする父親が彼その人であった.

 最初『行くな』と伝えようとしたが,今自分が何をすべきか悟り,ブラックホール内で観測された量子化データを娘に伝える.量子化データってモールス信号で伝えるには膨大過ぎると思うんだが,SF ということで割り引いておこう.そのデータを伝えたことで重力に関する理論が完成し,人類は宇宙に進出する技術を手にすることになる.普通なら主人公はそのままブラックホールに吸い込まれて死亡,となるはずだが,量子テレポーテーションにより土星軌道に出現,酸素残量 2 分のところで救出される.彼が生還したのは地球を出発して 100 年以上経過してからである.

 マーフィと再開するシーンも印象的だ.孫や曾孫,玄孫に囲まれてもうすぐ臨終を迎えようとしているが,外宇宙に残されたアメリアを救出するよう促す.100 年の間にワームホールを抜けるのに戦闘機サイズにまで小さくなった宇宙船に乗り込み,救出に出発する.アメリアもまた,恋人の亡骸を埋葬して冷凍カプセルに入ろうとするところで映画は終わる.

 心が洗われるようだ.科学的考証については専門家に譲るが,このような作品に触れられたことに感謝したい.

 『彼ら』とは宇宙に進出し,重力をも制御できるようになった未来の人類そのものであろうことは想像に難くない.時間を戻すことはできなくても,高次元空間から過去に干渉することはできそうである.滅亡に瀕した過去の人類に対して,間一髪のタイミングで救済の手を差し伸べたわけだ.このような人類救済のシナリオもあるのだ.

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