筋肉,運動および肥満:分泌臓器としての筋肉

 NHK スペシャル「人体」シリーズ第 2 集「驚きのパワー!“脂肪と筋肉”が命を守る」で紹介されていた論文である.筋肉もまた様々なメッセージ物質を出して体内の臓器と対話している分泌臓器である,という視座を提供した点でこの論文の功績は大きい.2018 年 7 月時点での被引用回数は 1000 を超える.

 筋トレはもはやボディビルダーやトレーニーの専売特許ではない.単に肉体を改造するだけでなく,代謝疾患や癌など人間を苦しめる病気を予防する優れた手段であることが,最新の科学研究によって分かってきた.運動が人の生命予後を改善することは疫学的には分かっていたのだが,その分子生物学的な機序がようやく明らかになってきた.今回はこの論文の全訳を紹介する.

 この論文の著者はコペンハーゲン大学の Bente Klarlund Pedersen 博士だが,論文引用の順番がきちんと文章通りになっていて非常に読みやすい.普通の論文だと引用の順番がぐちゃぐちゃで大変読みにくいのだが,きちんとした人なんだろうなと思わされる.いや,どうでもいいんだけどね.

https://www.nhk.or.jp/kenko/special/jintai/sp_4.html

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トレーニングの最適化:安全な筋力トレーニングにおける新しい進展

 低強度と高強度との筋力トレーニングにおける筋力と筋肥大の適応,システマティックレビューとメタアナリシスにおいて参考文献の一つに挙げられていた論文を抄訳する.ロシアからの筋生検を含む貴重な報告である.このような侵襲的な検査は旧共産圏だから可能なのかも知れない.

 トレーニング負荷の軽重の違いで肥大する筋繊維の型が異なる,という引用だけを抜粋するつもりだったのが,筋形成調節遺伝子にまで言及しており,ほぼ全訳となってしまった.二週間もかかってしまうのでは効率が悪すぎるのだが,ここは勉強と思って我慢しよう.

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低強度と高強度との筋力トレーニングにおける筋力と筋肥大の適応,システマティックレビューとメタアナリシス

 庵野拓将氏の 2018 年 6 月 21 日のブログ筋力増強と筋肥大の効果を最大にするトレーニング強度の最新エビデンスで公開された現時点でのエビデンス.

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ヒトにおいて筋トレの頻度,強度,ボリュームおよび様式は筋断面積にどう影響するか

 今回の記事は庵野拓将さんのブログ記事,エビデンスにもとづく筋肥大を最大化するための筋トレ・ガイドラインで引用された総説を抄訳したものである.

 この論文は総説であってメタアナリシスやシステマティックレビューではない点に注意が必要である.選択基準に従って何件の論文がスクリーニングされたか,除外基準に従って何件の論文が除外されたかの記述がない.この記事は抄訳であり,一部省略があることを記しておく.

The Influence of Frequency, Intensity, Volume and Mode of Strength Training on Whole Muscle Cross-Sectional Area in Humans Sports Med. 2007;37(3):225-64

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一週間の筋力トレーニングボリュームと筋容積との用量応答反応:システマティックレビューとメタアナリシス

 リハビリmemoにて庵野拓将さんがエビデンスにもとづく筋肥大を最大化するための筋トレ・ガイドラインで要約しているが,週あたりのセット数と筋肥大の間には用量応答反応がある.今回この論文要約の翻訳を試みた.

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