黙示録とシンギュラリティ

人はわれわれのひとりのようになり,善悪を知るものとなった.(創世記)

 俺は元クリスチャンだ.日本だけのプロテスタントの教団で,教祖は既に死んだ.その教祖は自分が生きている間にキリストが再臨すると言っていたが,今のところその気配はない.

 いや,教祖はどうでもいい.中学時代に家族の通っていた教会で聖歌隊の賛美歌に感動して以後,聖歌隊に加入し大学卒業までその教団に所属していた.教会では聖書通読と言って,要は毎日聖書を少しずつ読まされた.聖書には旧約と新約がある.それぞれ 39 巻と 27 巻,合計 66 巻だ.創世記から始まり黙示録に終わる,長大な神話と言っていい.全体を読み通すのに 1 年はかかった.確か 3 回は聖書全体を読んだと思う.おかげで聖書の文句を言われても大体はどこらあたりに書いてあったのか思い出せる.しかし何度読んでも理解不能だったのがヨハネの黙示録だ.

 黙示録には世界の破滅を表す戦争や疫病の記述がある.中でも世界人口の 3 分の 1 が死ぬという下りは圧巻だ.冷戦中なら核戦争による人類絶滅というシナリオは十分に理解できたし,当時は第 3 次世界大戦で自分は死ぬんだろうと本気で思っていた.しかし冷戦は終結し,核保有国はその破壊力故に核兵器を使用できないということも分かってきた.テロが世界を震撼させているとは言え,世界は概ね平和になってきていると言っていいだろう.

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